『シミ予備軍』で恐怖をかきたてる美容業界

最近、『シミ予備軍』という言葉が生まれました。

その名の通り、『今後シミになる予定のメラニン色素が、肌に蓄積している状態』のことです。これは悪い状態ではありません。紫外線から肌を守る機能が正常に作用していると言うことです。

にもかかわらず、いかにも『シミ予備軍』を肌トラブルの元のように扱うメーカーやエステがあります。

最近は、シミ予備軍を見るための機械もあって、デパートのカウンターやエステの個室などでよく使われています。そこで、シミ予備軍を見せて、私たちをおどします。もちろん、相手の言ってることは全部うそで、言っている本人にもシミ予備軍は大量にあります。

私たちをおどすパターンは、大体決まっています。相手の手が分かっていれば、何の問題もありませんが、初めての方は被害にあうみたいです。下記に一般的なパターンを書いておきますので、参考にしてください。

エステやデパートで行われるパターン

エステの場合は、繁華街を歩いていると、いきなり声をかけられます。デパートなどの場合は、ブラブラ歩いていると美容部員から声をかけられます。

「ただ今、無料お試しキャンペーンを行っています」 「肌の無料相談を行っています」 「アンケートにご協力下さい」 「美容に関する意識調査を行っています」 「キャンペーンで、無料肌診断を行っています」 「10分ほどで終わりますから・・」

などと、一見こちらには何のリスクもない提案で興味を引きます。また、突然なので、そもそも断ることの苦手な私たち日本人は、思わず相手のペースに乗ってしまいます。

それに、彼らは非常に訓練されているため、簡単な断り文句には、対抗する返しを用意しています。だから、一旦断ったぐらいでは引き下がらず、非常に愛想よく親しげに話をするため、「まぁ~、いいか~」と思い、ついついOKしてしまいます。

キャッチセールスの場合なら、近くにある雑居ビルの一室に、 デパートなどでは、カウンターに案内されます。アンケートに答えたり、キャンペーンの説明、簡単な相談など、ひとしきり話をして親近感を深めます。

相手との距離が近づいたと見ると、早速本題です。

『シミ予備軍発見装置』登場

「これから肌の診断を行います」と言って、『シミ予備軍発見装置』なるものが登場します。ちなみに、こういった機械は医療機器ではありません。そもそも、美容部員やエステで、医療機器を使用することはできません。だから、シミ予備軍発見装置で発見されたシミ予備軍も、本物であるという確証はありません。

怪しげなシミ予備軍発見装置で、顔の肌を調べ始めて、しばらくすると、

「これを見てください。顔にこんなにたくさんシミの予備軍があります」

「今はまだ表面に出てきていないので見えませんが、あと何年かすれば、顔にこれだけシミができるということなんです」

「知らず知らずのうちに、見えない部分にシミの元がこんなに蓄積されているんですよ」

「ほら、これを見ると、ほいれい線も崩れ始めているのが分かりますね、つまり、あと何年かで、この線に沿って、くっきりとしわができます」

「これを見てください。角質もこんなに老化し始めています」

「女性の肌は、20歳を過ぎると、急激に老化が始まるんです」

「今まで気づいていなかったかもしれませんが、もうこれだけ肌のダメージが蓄積されているんです」

「今の肌の状態は、とても年齢相当の肌とは言えません」

「このままでいると、あと3年くらいでこのシミの予備軍が、顔の表面にいっぱいにシミとなって浮上がってきますよ」

「シミだけではありません。フェイスラインの崩れや、しわについても、今のうちから対策をとらないと、手遅れになってしまいます」 ・ ・ ・

このようにして、「あと数年でシミやしわが大量にできて、大変なことになる」という恐怖感を植えつけます。人には、根拠の無いものであっても、目の前にある分かりやすいものを信じる特性があります。シミ予備軍発見器は、そういった人の心理をうまく突いたものと言えます。

そして、たっぷり恐怖感を植えつけた後に、根拠を提示します。シミ予備軍そのものが根拠不足のため、新たな情報によって根拠付けをします。

根拠のない根拠

「プロのモデルさんは、10代の頃から対策を始めていて、定期的にエステに通って、○○で肌の引き締めを続けているんです」 「年齢の割りに肌のきれいな人は、実は○○を使っています」

場合によっては、我々が知っている芸能人やモデルの名前も出します

大手の化粧品会社が有名な女優やモデルを使って高額なCMをガンガン流すのは、こういった時に私たちが信用しやすくなる状況を作るためでもあります。実際に、CMに出ている女優やモデルがそのメーカーの商品を使っていることは、まずありません。せいぜいCM契約中に使っているフリをする程度です。

そして、○○の部分には、相手の売り込みたい商材が入ります。美白化粧品や美容液、美顔器などが一般的ですね。共通して言えることは、どれも普通のものに比べて高額だと言う部分です。こうやって、最初はリスクのない提案を聞いているつもりが、いつの間にか高額な商品を売り込まれることになります。

エステなどでは、個室でこういった話を長時間するために、買わないと帰れないという心理が働き契約することが多いです。「買わない」という気持ちより、「帰りたい」という気持ちが勝ってしまうんですね。

デパートなどでは、自尊心をくすぐられます。 「お客様クラスの方でしたら」 「有名人も使っている」 「あなたにこそふさわしい」 など、それっぽい言葉を並べられて、気持ちよくなって買ってしまいます

まとめ

何を買うにしろ、買わないにしろ、後悔しなければ個人の自由です。でも、多くの人には「だまされた」という感覚が残ってしまい、お金の喪失感に加え、大きなストレスを抱えてしまいます。そして、このストレスが新たな肌トラブルを招きます。

ぜひ、今回お話したパターンを、新たな肌トラブルを増やさないための参考にしてください。

更新日:2017.11.07投稿日:2013.07.11

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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