電話しないメーカーはいい会社?│化粧品CMの不思議(2)

前回は、誤解をあえて招く化粧品広告について話しました。

今回は、友人Kからの質問その2についてお話します。「CMで、『こちらから電話は一切しません!』って自信満々に言ってるけど、あれ何?」と聞かれました。

改めて質問されると、確かに不思議ですね。「電話しないからと言って、何なんだ?何か変わるのか?」と、思ってしまいます。

「高いお金を払って、わざわざCMで連呼することなのか?」と、友人Kも首をひねっていました。

確かに意味不明のようにも思えますが、しっかりと根拠があります。これは、「電話をしません」とあえて言うことで、それだけ商品に自信があるということを訴えているのです。

残念なことですが、化粧品業界は、売り込みのきつい会社がたくさんあります。主に、こういった会社は、無料サンプルなどで名簿を集めて、あとは電話や訪問をすることでお客さんを説得して、売り込みます。

とある化粧品メーカーは、アポインターの給料が歩合制で、化粧品を売り込むことでマージンがもらえます。やり手のアポインターだと、1,000万円を超える年収をたたき出しているそうです。一体、どれだけの人に売り込んだら、それだけの膨大な収入をもらえるんでしょうね・・・。

確かに、これだけのお金がもらえれば、あの手この手で売り込む人がいるのも、うなずけます。売り込まれたことで肌トラブルが改善し、喜んでいる方やその化粧品に満足している方も当然おられるでしょう。

しかし、断り切れず、欲しくないものを購入してしまった方もおられることでしょう。誰でも今までの人生で一回ぐらいは、強烈な売り込みに嫌な思いをしたことがあるのではないでしょうか。化粧品のほかにも健康食品やエステ、貴金属の業界にも当てはまりますね。

こういった経験は、私たちの中に非常に嫌な思いとして残っています。 そして、企業からの電話は、大半が売り込みなので、『売り込み=電話』という構図が深く根付いています。 そこに、「電話はしません!」という言葉は、安心感を与えます。

「あ~、もうあんなに嫌な思いをすることはないんだ!」と嫌な思いをした人ほど、安心するのではないでしょうか。人によっては、この安心感が購買動機になるのです 特に、押しの弱い人はこの言葉にひかれると思います。

この見せかけの安心感も、化粧品業界ではよく使われる手法です。例えば、「パラベンは危険だ」と声高らかに叫ぶ化粧品メーカーなどがそうです。ちなみに、パラベンに対する私の見解は以下の通りです。(参照:「防腐剤(パラベン)は危険?」)

ご存知の方も多いと思いますが、パラベンは、防腐剤です。商品の安定性を保つために必要不可欠で、安全性の高さにも定評がある優れた成分です。 化粧品以外にも、医薬品や医薬部外品、食品などに使用されています。

にもかかわらず、世の中ではパラベンが悪いと信じている人がたくさんいます。 これも『電話=売り込み』と同じように、『パラベン=肌に悪い』というイメージ付けを行っているためです。そして、「電話しないことは良いこと」と同じように、「パラベンの入ってない化粧品は安全」と思わせています。

どちらも論理が破綻していますよね。別に、電話するかしないかで、その化粧品の良さや会社の姿勢が決まるわけではありません。それらは、電話の内容で決まるのです。

たとえば、お得な情報であったなら、電話をされることでも嬉しいはずですし、逆にされなかった場合には、「なんで電話してくれなかったの?!」と思うはずです。化粧品も同じです。パラベンが入っているかどうかで安全性が決まるものではありません。 安全性を決める要素は、配合されている成分全てと製造方法、使用方法、保管方法などです。

だから、一見、整合性が取れていて、耳障りの良い言葉には気をつけましょう。よくよく考えると、雰囲気だけで、論理が破綻していることがあります。

また、ここからは余談になりますが、もう一歩深く考えてみると、さらに違和感を感じます。 会社というのは、意識しようとしまいと、お客さんを選びます。もちろん、お客さん側も、会社を選ぶことは言うまでもありません。例えば、「電話はしません」という会社は、電話されると嫌な人をお客さんを選んでいることになります。

では、電話されることを恐れる人とは、どんな人でしょうか? 一つは、電話の内容ではなく、電話そのものを悪いものと受け取ってる人。 つまり、相手のイメージ戦略に乗っかってしまう『なんとなくな人』でしょう。

そして、二つめは、押しに弱い人。 人から強く勧められると思わず買ってしまう、このような経験を今までたくさんしている人です。

「電話はしません!」に、電話をしないなんて良い会社だという、プラスの感情を抱いた方は、この会社のターゲットに入ってしまっている、ということです。 こう考えると、電話以外の方法でガンガン売りこまれれば、たくさん買ってしまいそうです。「電話をしてこない=良い会社」と思った方は、どうぞお気をつけください。

ちなみに、私たちアースケアもお客さんを選んでいます。厳密に言うと、どんな業界、職種であっても、意識してようが無意識であろうが、売り手と買い手というのは、お互いに選びあっているのですけどね。
私たちの場合は、乾燥肌や敏感肌で悩んでいる方というのは当然で、一言で言うと、質実剛健な人です。

会社の大きさや知名度、CMや広告に対して、商品の判断基準をおかない。大多数の人の考えに流されず、流行を追わない。言いかえれば、自分の考えをしっかり持っている人。事実を自分の体験や知識によって、しっかりと認識している人。勉強する意欲がある人。いろいろありますが、大まかに言えば、こういった方が多いです。どちらかと言えば、世の中では少数派ですね(笑)

実は、こういった方たちが集うのには、理由があります。たとえば、アースケアのお試しセットを案内しているページ。

文字ばっかりで、お世辞にもお洒落とは言えません。どちらかと言えば、ダサいです。人によっては、文字ばかりで読む気もしないでしょう。 普通、化粧品会社ならトップページにきれいな動画が載っています。 商品の写真や、キレイな女優さんなどです。しかし・・・ アースケアの場合は、おっさん(私)の写真が小さく載っているだけです。 あとは、お試しセットの写真や、いただいた声のFAXやハガキの画像など。特別キレイなものでもありません。

でも、私たちはそれでいいと思っています。見た目も大事だとは思いますが、同じ労力をかけるのであれば、おしゃれさを追いかけるよりも中身を重視したいと思っています。 もちろん読みやすくする努力を怠ってはいけませんが。 多少文字ばかりで読みにくくても、中身がよければ、必ずお客さんの役に立ちます。

確かに、読む気が失せるかもしれませんが、読んでいただければたくさんの発見があり、それらの知識があなたの肌をきれいにする助けになると信じています。

今、これをつぶさに読んでくださっている方も、得られるものがあると思っているからこそ、読んでくださっているのだと思います。

このようにして、会社とお客さんとは相性があり、双方が気に入って初めて良好な関係が築かれます。そういった意味では、「電話しない」という会社とそのお客さんとも相性がいいのでしょう。これは化粧品だけでなく、どの業界でもいえることです。

また、人間関係でも同じことかもしれません。 だから、新しい商品との出会いがあった場合は、その会社が発信しているメッセージやその方法を観察して、自分にあっているか?相性がいいか?を判断することで、不快な思いをしなくてもいいかもしれません。

ちなみに、友人のKも私と相性がいいので、今回のような疑問や違和感を感じたのでしょう。私がした話に深くうなずき、納し、「スッキリした!」と言っていました。あなたもスッキリしてくれたなら、嬉しいです。

投稿日:2013.12.03

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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