高いものの価値とは?

車とバッグ
中身が同じでもあえて高い商品を買う理由

化粧品の値段はどうやって決まっているのか?
疑問に思うことはありませんか?

これまでにも、『高い化粧品ほど肌によいって本当?』や、『百貨店の化粧品が高額な3つの理由』などで、化粧品の価格と中身の関係性について、触れてきました。

世の中の化粧品の価格は、100円~100,000円と、幅広くあります。中身にかかるコストが違うなら、価格が違って当然です。でも、化粧品の場合、中身がまったく同じで価格が違うことも珍しくありません。

化粧品以外にも多くの業界でこのような現象が見られます。例えば、自動車メーカーのトヨタとレクサスの関係です。両メーカーは、多くの部品を共有しながらも、価格差があります

例えば、トヨタの『SAI』と、レクサスの『HS』は、車格が同じです。見た目も似ています。

最上級グレードの価格を比較してみると・・・
(価格はこの記事を書いた当時です。)
SAIは、4,330,286円。 HSは、5,677,714円。その差は、1,347,428円。レクサスは、トヨタの約3割高いことになります。

この差には、装備やディーラーの接客コスト、設備の違いなどが含まれているので、実質的なコストの差は1~2割程度の差になります。

この1~2割の価格に付加価値を見出している人が、トヨタではなく、レクサスを選ぶのでしょう。高級な装備やディーラーの接客の良さなどに価値を見出す人はレクサス、それよりも価格を重視する人はトヨタを選ぶ、ということですね。

バッグや靴にも価格差があります。無名ブランドのバッグなら3万円も払えば革製で質の良いバッグが手に入ります。一方、エルメスのバーキンは、小さいサイズでも80万円以上します。この場合、バッグとしての機能を見ると、まったく同じです。付加価値は、ブランド力や所有欲が満たされることとなります。

ちなみに、エルメスの場合は、職人の技術育成と維持にコストをかけているそうです。何十年前の技術であっても、現在まで受け継がれており、そのためにどんなバッグでも修理が可能だそうです。

だから、世代を超えてバッグが受け継がれていくことが多いようです。祖母から受け継いだバッグを修復してほしいといったオーダーも来るみたいです。こうなると、もうただのバッグではなく、家宝を買うイメージですね。そう思うと、高くはないのかもしれません。

このように、中身や機能はほぼ同じでも、ほんの少しの付加価値(機能やデザイン、ブランド力)で価格は変わります。車だけではなく、多くの業界でこうやって価格が決定されています。

このように価格は、言い換えれば、その人固有の付加価値の高さだと言えます。そして、付加価値の中身は、自分自身が感じる満足感とともに、他者から見られる満足感もあります。

車の場合なら、トヨタよりもレクサスの方が高級車だと言われます。バッグの場合なら、無名ブランドよりもエルメスのバーキンの方が、高いバッグを持っていると思われることでしょう。ここに、価値があるのかもしれません。

誰にも見られない深夜にしかレクサスの車に乗らない。誰にも見せずに、バーキンを見ながら家の中でニヤニヤしている。こういった使い方をする人は、よほど少数派でしょうしね。

このように、価格差による付加価値の高さは、他者からの視線によるところが大きい部分です。認めたくない人もいるかもしれませんが、人と違うもの、人がうらやむものを所有している満足感は、我々を非常に満たしてくれる要素なのです。

なぜ、高い化粧品が売れるのか?

これを化粧品に置き換えるとどうでしょうか?

化粧品に関していえば、中身は同じなのに価格が違うものはたくさんあります。例えば、60gで10万円のクリーム。どんなに高額な原料を使ったとしても、1万円以下で作ることができます。中身だけで言えば、1万円以下のクリームで同等のクリームは世の中にたくさんあります。

違いと言えば、ブランドや容器やパッケージのデザインです。確かに、こういったものを付加価値としてとらえる人もいるでしょう。

でも、他のものと決定的に違う所があります。それは、他者の目が届かないということです。特に、スキンケア化粧品は、他の人に見られる機会はほとんどありません。だから、ブランド力やデザインによる付加価値はあまり高くありません。パッケージも最初に目にするだけで、捨てられます。

誰にも「高額なクリームを使っている」と知られることもなく。逆に、旦那や彼氏に知られたら、場合によっては、喧嘩の種になるでしょう。付加価値どころか、逆にリスクを感じます。

でも、こういった高額化粧品は限定発売されると完売します。一体、10万円のクリームが売れる理由は何なのか?通常の1万円以下のクリームと何が違うのか?これもおそらく、満足感なのでしょう。

人と違うもの、人がうらやむものを使っていることで得られる満足感は、他者からの視線は関係がないのかもしれません。

私にはなかなか理解しがたい価格帯なのですが、満足感などを得ることで、結果として、肌トラブルに悩む人が一人でも減ればいいかな、と思います

高い化粧品を買う理由を尋ねてみると・・・

先日、仕事の関係で20代前半の女性数名と話す機会がありました。雑談の中で、その中で5名ほどの女性が高額な化粧品を使っていることが分かったので、かねてより興味があった高額化粧品の購入動機を聞いてみました。

すると、その理由は、すごく単純なものでした。高いお金を払うのだから、ものすごくこだわりの理由があるのかな?と思っていたのですが、現実は真逆でした。

高い化粧品を買う理由は、
【1】テレビCMや雑誌に、良く紹介されている
【2】その際、キレイな女優が起用されている
わずか、この2点のみでした。

現在のように、情報が容易に手に入るにも関わらず、スキンケアや化粧品の中身などをインターネットで一切調べないとのこと。家にパソコンはあるものの、電源を入れるのが面倒なのでほとんど使わないみたいです。

インターネットを使うのもパソコンではなく、100%スマートフォン。スマホの画面は小さいので、文字を読む気にならず、おのずと調べるという行為に至らないらしいです。

また、さらに驚いたことは、テレビCMや雑誌に載っているからといって、その化粧品が良いとは限らないことや起用されている女優がその化粧品のおかげできれいな肌を手に入れている訳ではないことも知っていました。でも、CMや雑誌、そして、そこで起用されている女優を見ると、どうしても欲しくなって思わず買ってしまうそうです。

ん~、私には信じられない話です。選択理由が正しくないことを知っているにもかかわらず、その選択理由で高額な商品を購入する気持ちは、ぜんぜん理解できませんでした。

もちろん、このような女性ばかりではありません。問い合わせをいただく中には、理屈や理論を重視される方も多くいらっしゃいます。

しかし、テレビCMや雑誌に紹介されている化粧品の数が相変わらず減らないことを見ると、「あながち少数ではないのだろうな」と感じます。

私の落としどころとしては、このような女性は、深刻な肌トラブルに悩んでいないんだろうなと感じました。実際に、その女性も若いせいもあって、肌は比較的キレイでした。だから、大して調べずに軽い理由で購入するのでしょう。お金だけを見ると損をしてると思いますが、肌に大した悩みがないのは非常に羨ましいです。

結論

肌トラブルに悩んでいる人ほど、スキンケアや化粧品の知識が深まり、見る目が鍛えられて、費用対効果の高い化粧品に出会う確率が上がる

対して、肌トラブルに悩んでいない人ほど、衝動的に高い化粧品を買う。そして、若い独身女性が使っている。

ちなみに、この女性は、年間のスキンケア化粧品購入額は100万円を超えていました。こんな業界にいる私から見ても、本当にびっくりです。

投稿日:2015.08.11

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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