透析中の皆さんが、肌の乾燥に頭を悩ませることはよくある話です。乾燥肌は、粉をふいたような状態であることに加えて、しばしばかゆみの問題をも引き起こします。こうした問題で皮膚科を訪れる方が少なくないと聞いています。ここでは、透析を受ける方々の肌の乾燥が原因でのかゆみの根源と、それに対する有効な手立てについてご紹介します。
一体なぜ肌の乾燥はかゆみにつながるのでしょうか
肌が乾燥し、かゆくなる主な理由は2つに分けられます。
原因① 皮膚保護層の機能不全
皮膚は外部の層から内側に向かって表皮、真皮、そして皮下組織の3層構造をしており、外側を覆う表皮の角質層は、水分を閉じ込め、外部のダメージから守る重要なバリア機能を果たしています。しかし、冷たい空気や暖房による環境の変化が角質層の水分を奪うと、この保護機能が十分に働かなくなります。これにより、外界のさまざまな刺激に対して敏感になり、かゆみが生じるのです。
原因② かゆみの連鎖に嵌っているかもしれません
かゆみを感じると、知らず知らずのうちに掻きむしってしまいがちですよね。しかしこの行為が、実はかゆみを増長させる原因になるんです。皮膚を掻くことで生じる刺激は、かゆみを強め、さらに掻きたくなるという負のスパイラルを招きます。掻く行為が炎症を引き起こしたり、皮膚の防護機能をダメージさせたりすることで、結局もっとかゆみを感じるようになってしまうのです。だからこそ、かゆみを感じたら掻かずに、別の対処法を試みることが肝心です。
乾燥肌によるかゆみは、保湿対策で予防しましょう
かゆみに悩む方の中には、お医者さんから処方されたステロイドの塗り薬をお使いの方も多いでしょう。ステロイド塗り薬は炎症を抑えることに特化していますが、保湿剤のような役割は担いません。
したがって、乾燥によるかゆみをケアするには、ステロイドだけでは対策が不足しているわけです。
この2つの違いをお分かりいただきやすくするために、たとえばこんな例を挙げてみましょう。ご近所の灰皿から小さな火が出たというハプニングがありました。火が隣の家に広がる前に、急いで消火剤をかけて火を消す必要があります。
しかし、これは一時しのぎであり、火が出た根本的な理由には対処していないのです。消火剤はステロイド塗り薬に相当します。では、なぜ火が出たのかを探ってみると、灰皿には未燃のタバコがたくさんあり、表面は消えても下の部分が乾燥していて、いつ火が再発するかわからない状態でした。
定期的な掃除と、灰皿に水を溜めておくことで、火事の再発を予防するのです。この水が保湿剤に当たります。炎症を時々抑える（火を消す）ことは大切ですが、日常的な清潔保持と保湿によって、肌のバリア機能を強化し、かゆみや炎症を未然に防ぐことが可能です。また、緊急時にかゆみを抑える市販薬を常備しておくことも、効果的な戦略の一つと言えます。
対策① 肌を清潔に保ち、優しく洗うこと
かゆみが出るということは、肌の防御機能が低下しているサインかもしれません。それゆえに、できる限り肌を刺激から守る必要があります。特に、お風呂で身体を洗う際には、洗浄成分が強すぎない、肌にやさしい製品を選びましょう。しっかりと泡立て、泡を使って肌を柔らかく撫でるように洗うことが重要です。ナイロンタオルで強く擦ると、肌を守るバリアが壊れてしまうので避けた方が賢明です。そして、洗い流すときは、優しいシャワーを使ったり、そっと湯をかけ流したりすることで、肌をやさしくケアできます。
対策② 定期的な保湿とかゆみ予防のための塗布 ～ 頻繁に塗りましょう ～
常日頃の保湿におけるクリティカルなアプローチは、保湿剤を定期的に塗る習慣を身に付けることがキーポイントです。手を洗い終えた直後や、靴下をはく前に塗ることを習慣にすることで、保湿はもっとも有効に機能します。特にバスタイム後のスキンケアは、その重要性を忘れてはなりません。お風呂から出た肌は乾きやすく、保湿剤を5分以内に均一に塗ることで、肌の防護機能を強化することができるのです。また、かゆみを覚えた際は、掻くのを我慢して直ちに「かゆみ止め治療薬」を使用するのが得策です。夜、無意識のうちに背中や脛を掻いてしまう人は、就寝前に再度保湿クリームを塗るなどして対処を心がけてみてください。
総括
ステロイドの外用薬や手軽に購入できるかゆみ止め治療薬でかゆみをコントロールすることも時と場合によっては必須ですが、日々の適切なスキンケアにより、皮膚のバリア機能を維持するかゆみの予防措置を取ることの大切さを見落としてはなりません。やさしく洗って、積極的に保湿するスキンケアルーティンを、ぜひとも取り入れて実施してみてください。
更新日：投稿日：2024.03.02
