以前、「セラミド化粧品って本当に乾燥肌・敏感肌に効果があるの?」を検証しました。このときは、セラミドの効果の指針として、富士フィルムの実験データを元に推察しました。

私見ではありますが、今回は『セラミド化粧品』で、おそらく最も有名である『ヒフミドシリーズ』を販売している小林製薬がリリースした研究結果を元に、セラミドの効果を検証していきたいと思います。

基本的には、セラミドの中でもヒト型セラミドが最も効果があるというスタンスで、実験内容もヒト型セラミドの効果について行われています。

セラミドの研究報告から検証する!
セラミド産生促進効果とはどんな効果なのか?

まずは、2016年8月にリリースされたセラミド効果の実験を見てみましょう。

このセラミド効果の実験結果を簡単にまとめると・・・

1.『ヒト型セラミド1,2,3』は、ELOVL1, ELOVL3, CERS3, CERS4, PPAR-α, βGCaseの遺伝子発現を高める(図2)
2.『ヒト型セラミド1,2,3』は、ELOVL6, CERS2, SPT, SMaseの遺伝子発現には影響しない(図3)
3. 『ヒト型セラミド1,2,3』は、セラミド1, 2, 4を増加させる(図4)

引用:「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見・セラミド産生促進効果を確認―2016年8月6日・7日 第34回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて発表―/2016年8月19日小林製薬ニュースリリースより

この実験で言いたいことは、

  • ヒト型セラミド単体より、『ヒト型セラミド1,2,3』を配合した混合物の方がセラミドの生合成に関わっている成分が増加するよ。
  • その結果、『ヒト型セラミド1,2,3』は、セラミド1, 2, 4を増加させるよ。

つまり、「ヒト型セラミド配合化粧品を使うなら、『ヒト型セラミド1,2,3』が混合されているものを使おうね」ということを伝えたいようです。

では、さっそく私の主観的な視点ではありますが、検証していきます。

セラミド効果検証①

まず、『ヒト型セラミド1,2,3』の優位性を示す図2を見て行きましょう。

ELOVL1, ELOVL3, CERS3, CERS4, PPAR-α, βGCaseの遺伝子発現を高める(図2)
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認

「『ヒト型セラミド1,2,3』によって、セラミドの生合成に関する遺伝子の発現が高まる」という根拠が示されています。

何も添加していない状態と『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/mlと50μg/mlを添加したグラフです。

それぞれの最も高まった遺伝子の発現量を見ると・・・

ELOVL1:1.5倍
ELOVL3:2.5倍
CERS3:2倍
CERS4:2.5倍
PPAR-α:1.2倍
βGCase:3倍

と書かれています。

これだけみると「3倍も増加するなんてすごいな~」と思うのですが、実際は、そうではありません。

この実験は、三次元培養皮膚モデルを使用して人工的に構成された条件下で行われています。これは、各種の実験条件が人為的にコントロールされた環境であることを意味しており、非常に効果の出やすい実験手法です。たまに、テレビで試験管の中で実験している様子が映りますよね、あんなイメージです。

だから、私たちが現実にセラミド化粧品として皮膚に使う場合は、効果が格段に落ちえます。効果の落ちる割合は個人差なので一概には言えないのですが、この程度の倍率ならセラミド化粧品の効果は、「ほとんど期待できないのでは」と疑問に思います。

ぜひ、化粧品に添加した状態で倍率を出してほしいものです。

また、この実験は、遺伝子の発現量を計測しているのですが、この手法そのものが『言い過ぎ』を誘発しやすいと言われています。

私の100倍ほど詳しい方が過去の事例などを交えて説明されているので、興味のある人は読んでみてください。

参照:遺伝子発現データに基づく予測と推定:言いたい ことと言えること

このことから、セラミド関連の遺伝子発現量の倍率の低さと『言い過ぎ』が起きやすい実験方法が気になるところです。

セラミド効果検証②

次に、比較対象の問題です。

もし、セラミド関連の遺伝子発現量の増加を主張するなら、他のヒト型セラミドの組み合わせと比較するべきではないでしょうか?

今回の実験は、『ヒト型セラミド1,2,3』の混合物なのですが、ヒト型セラミド1,2,4混合物とか、ヒト型セラミド2,3,4とかと比較して欲しいところです。

他のさまざまなヒト型セラミドとの組み合わせと比較して、 『ヒト型セラミド1,2,3』が一番効果あってこその主張だと思います。

単に、 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物単体の濃度比較だと、特に優位性を感じません。

セラミド効果検証③

次に、 『ヒト型セラミド1,2,3』による『ELOVL6, CERS2, SPT, SMase』の遺伝子発現量の効果がなかったとされる図3を見てみましょう。

図3 セラミド合成関連酵素遺伝子の発現量の変化
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認

『ELOVL6, CERS2, SPT, SMaseの遺伝子発現には影響を与えないことを確認した』とのことですが、いやいや、影響与えているでしょう。見ての通り、グラフが落ちているものがあります。

ELOVL6、SMaseは、『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/ml添加すると遺伝子発現量が落ちています。

SPTは、『ヒト型セラミド1,2,3』を50μg/ml添加する遺伝子発現量が落ちます。

CERS2は、きれいに右上がりなのに、『発現しないチーム』に入っているのかよく分かりません。

ともかく、ELOVL6, SPT, SMaseの図を見てみると、配合量によって落ちたり増えたりして一貫性がありません。

本当に、『ヒト型セラミド1,2,3』が遺伝子発現量に関係しているなら、良くも悪くも右上がり、左上がりと一貫性があるように思います。

この動きを見ていると、『ヒト型セラミド1,2,3』による遺伝子発現量の優位性を示す図2のデータがたまたま右上がりになったデータを使っているように感じます。

仮に、図2に示される『ヒト型セラミド1,2,3』による遺伝子発現量の優位性が正しかったとして、ELOVL6, SPT, SMaseは減少しても問題ないのでしょうか?

これらの成分もセラミドの生合成に深くかかわっています。

セラミドの生合成は、複数の成分が関係しています。ということは、減少する成分があるということで、全体のバランスを崩して、むしろセラミドの生合成が減少するのではと推察します。

本来は、セラミドの生合成に関わる成分全ての遺伝子発現量が確認できてこそ、セラミドの生合成の増加に期待できるのではないかと思います。

セラミド効果検証④

次に、セラミド1,2,4の増加を示した図4と見てみましょう。

図4 セラミド量の変化
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認

個別にみると、

  • セラミド1:約1.3倍
  • セラミド2B:約1.4倍
  • セラミド4:約1.3倍

いずれも大した倍率じゃないですね。

図2と同じように、セラミド5も微量ですが右上がりなので増えたと主張できるのですが、なぜか、なかったことになっています。

セラミド2Aは、 『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/ml添加すると減少して、50μg/ml添加すると増える奇妙な現象が起きています。これを見ると、先ほどと同じように、偶然に右上がりとなったデータに着目しているにすぎないのではと疑念を抱いてしまいます。

また、セラミドが増えるという比較対象も『ヒト型セラミド1,2,3』だけではなく、同じようにセラミド増産効果があるとされる他の原料と比較してほしいです。そうでなければ、図4の倍率がすごいのか、しょぼいのか判断できません。

たとえば、

これらの化粧品原料もセラミド増産効果があると主張しているので、次回は、ぜひ比較してほしいです。

セラミド効果検証⑤

この研究最後の『ヒト型セラミド1,2,3』の水分蒸散率を示した図5を見てみましょう。

図5 セラミド量の増加 蛍光抗体染色
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認

『ヒト型セラミド1,2,3』を添加したら、水分の蒸発する量が約25%減ったことを示しています。

これも比較がないので、この水分蒸散率がすごいのか、しょぼいのか判断できません。ぜひ、普通のワセリンでいいので比較してください。

何も塗っていない状態と比較して25%程度なら、それほど効果があるようには思えません。たぶん、ワセリンの方が高いのではないでしょうか?

また、濃度が濃くなっても、効果がほとんど変わらないのも疑問です。本来、ただの油分でも使う量が増えれば、油の膜が厚くなり水分蒸散を抑えます。

なのに、セラミドは濃度を増やしても水分蒸散効果がないということは、そもそも保湿効果が乏しいのではないかと疑ってしまいます。

セラミドの研究報告から検証する
2017年リリース

次に、2017年10月にリリースされた「『ヒト型セラミド1,2,3』」の肌への有効性を新発見・肌のたるみ改善効果を確認」を見てみましょう。

前回リリースされた際、セラミド効果に感じた疑問や疑念が解消される内容が含まれているかなと期待したのですが、まったく関係のない内容でした(ガッカリ)

1.『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した、化粧水、クリームの4週間使用試験で、角層水分量の増加、キメの改善、肌のたるみの改善を確認
2.『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞を活性化し、コラーゲン収縮能を促進する
3.『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞のコラーゲン接着因子、インテグリンの発現量を増加させる
4.『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞において、弾性線維の構成因子であるフィブリリンの発現量を増加させる

「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見・肌のたるみ改善効果を確認―2017年10月23日~25日 IFSCC2017国際化粧品技術者会連盟中間大会(韓国)にて発表―/2017年10月26日小林製薬ニュースリリースより

実験内容を簡単にまとめると、要は、セラミド効果は、いろんな肌の悩みに対応できるよということです。

セラミド効果検証①

『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した、化粧水、クリームの4週間使用試験で、角層水分量の増加、キメの改善、肌のたるみの改善を確認した根拠の図1を見てみましょう。

図1 ヒト型セラミド1,2,3混合物配合化粧水及びクリームの連用試験結果
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認

この図1だけを見ると、それぞれ効果があるように見えます。しかも、人の肌を使い、現実的に化粧水とクリームを使って検証しています。前回の実験方法と比べても現実的で信頼できそうです。

でも、致命的な落とし穴があります。

まず、比較対象が明確ではない点。

図1は、使用前とセラミド化粧水、セラミドクリームを塗布した場合の比較なんですが、使用前って何ですか?

化粧品を使ったスキンケアを行っていない状況?

もし、そうなら、スキンケアをおこなっていない期間はどれぐらいなのか?

ここら辺を明確にしてもらわないと、正しいセラミド効果の判断ができません。

使用前がスキンケアを行ってないと仮定すると、この図に示された効果は大したことありません。ポピュラーな化粧品を使っても同等程度の効果が出るでしょう。もしかしたら、もっと高い効果が出る可能性もあります。

セラミドが既存の化粧品成分よりも優れているというなら、既存の化粧品成分と比較するべきです。

自社の既存化粧品でもいいので、ぜひ、何かしらの化粧品を使ったスキンケアと比較してほしいところです。

セラミド効果検証②

次に、化粧水とクリームを使ったのことですが、なぜ、2つのアイテムを使ったのでしょうか?

本来、セラミド単体の効果を試すなら、セラミド配合のクリームだけでいいはずです。ただ、この場合は、セラミドを油剤に溶かすために、油溶性分の効果も発揮されてしまいます。だから、厳密に言うと、セラミド成分単体の効果となりません。

でも、できるだけ不要な要素を配合して、純粋にセラミド成分単体の効果を追い求めるべきでしょう。クリームだけでも、油分という不確定要素が入るのに、さらに、化粧水まで使う意味が分かりません。

そうなると、もはや一般的なスキンケアの効果も加味されてしまいます。

もちろん、セラミド効果の実験結果もどんどん薄れてしまいます。この図1のセラミド効果の結果そのものも大した効果と言えないし、比較対象もよく分からない。
もし、比較対象が化粧品を使ったスキンケアを行っていない状態なら、さらにセラミド効果がショボイ。また、その結果、化粧水、クリームを使っているために、セラミド単体の効果とは言えない。

ただただ、残念な実験です。

セラミド効果検証③

次に、図2の『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した化粧水とクリームを使用したアンケート結果なのですが、これは実験とは呼べません。

言わずもがな、アンケートは回答者・内容・取る状況によって人為的にコントロールできるので飛ばします。

図2 ヒト型セラミド1,2,3混合物配合化粧水及びクリームの連用試験体感アンケート結果
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認

セラミド効果検証④

次に、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物がコラーゲンに良い効果をもたらす根拠です。

図3は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞を活性化し、コラーゲン収縮能を促進する結果。

図3 ヒト型セラミド1,2,3混合物のコラーゲンゲル収縮能促進効果
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認

図4は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞のコラーゲン接着因子、インテグリンの発現量を増加させる結果。

図4 ヒト型セラミド1,2,3混合物のインテグリン遺伝子発現量増加効果
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認

図5は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞において、弾性線維の構成因子、フィブリリンの発現量を増加させる結果。

図5 ヒト型セラミド1,2,3混合物のフィブリリン発現量増加効果
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認

3つまとめていきます。

細胞当たりのATP量、コラーゲンゲルの収縮能、インテグリンα2、フィブリリン1、すべてが『ヒト型セラミド1,2,3』混合物の濃度別の比較になっています。

その結果は、ひとつを除きあとは全部凸凹です。

なぜ、濃度が増えると減少するのか?
その結果が、本当に優位性を示しているのか?
確かに、何もしていない状態よりは優位性があるものの、非常に疑問を感じます。
配合量が増えているのに、効果が下がるのって納得できません。

きれいな右上がりを見せているのは、インテグリンβ1だけです。
インテグリンβ1だけは、実験結果として信頼できそうです。
もちろん、これらの実験も人為的に作られた環境でセラミド効果を出すために特化された実験方法です。
その割に大した結果が出ないように感じます。

小林製薬は、その名の通り製薬会社です。
だから、もっと医療的な視点でガッツリ実験してほしいです。

実際には、体内のセラミドをどれだけ増やすのか?
その結果、保湿効果やバリア効果が既存化粧品原料と比べて、どれだけ優位性があるのか?

セラミドに抜群の保湿効果やバリア効果があるなら、医薬品としての認可をとって、保険が効くようにしていただきたいものです。

最近の小林製薬は、2001年に使い捨てカイロで有名な桐灰科学、2006年には間宮アロエ軟膏aで有名なアロエ製薬、2013年に六曜製薬とジュジュ化粧品を傘下に収め、2014年にスキンケア事業部を新設しています。

2016年にアメリカの化粧品製造販売会社のBerlin社とその子会社Perfecta社を完全子会社化しています。
製薬より、どうも化粧品やトイレタリーに力を入れており、効果そのものよりネーミングやマーケティングに力を入れているように感じます。

有名な冷えピタも熱を下げる効果は一切なく、ただ冷えたように感じて気持ちいいだけです。医師からも、「意味ないから使わなくていいよ」い言われるありさま。

セラミド化粧品も当初はヒト型セラミド2推し、他社もよく似た商品を出してきたからなのか、今は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物に変更しました。
ただ、なぜ、ヒト型セラミドの中でも1,2,3を選択したのか?
『ヒト型セラミド1,2,3』混合物の各セラミドの配合比率は?
『ヒト型セラミド1,2,3』混合物の各セラミドの配合比率の根拠は?

など、企業秘密と言えばそれまでですが、あまりに不明な部分が多いです。

セラミド4%という高配合セラミドクリームも発売されていのですが、これもセラミド配合量としては異例の4%も配合する根拠が分かりません。

それでも売れてるから企業としては成功と言えるのかもしれませんが、再度、製薬会社としてネーミングやマーケティングだけでなく、研究にも力を入れて欲しいなと思った次第です。まあ、大きなお世話でしょうが。