以前に、化粧品に含まれるセラミドは、「通常の化粧品成分と大差ない」と一旦結論づけた記事を書きました。セラミド効果について書いた記事はこちら、『セラミド化粧品って本当に乾燥肌・敏感肌に効果があるの?』をお読みください。

その後も、いろいろと情報を集めていたところ、よくよく調べると、一部のセラミドにはすごい効果が期待できるようです。

実験レベルでは、すでにいくつか実証されています。実験結果としてはわかりやすく、個人的には信頼できるものだと思います。

せっかくなので、富士フィルムの実験結果を例に、時系列で詳しく見てみましょう。

ヒト型ナノセラミドの研究で実証されたセラミド効果とは?

2010年に富士フィルムから、『ヒト型ナノセラミド』の効果についてリリースされました。

内容を簡単にまとめると・・・

  1. セラミドにもいろいろあるけど、ヒト型セラミドが体内のセラミドと親和性が高いため他のセラミドに比べて高い効果が期待できる。
  2. ヒト型セラミドは、溶液中で結晶化しやすいために、大量の油剤(オイル)や乳化剤(界面活性剤)が必要となるため高濃度で配合することができない。
  3. ヒト型セラミドは、オイルの溶媒中に低濃度でしか配合できず、分子量も100~300ナノメートルサイズなので角層への浸透力が弱く効果が期待できない。
  4. ヒト型ナノセラミドは、従来のセラミドようにオイルや乳化剤を用いる必要がないので、高濃度配合が可能となり、20ナノメートルサイズまで小さくすることに成功。
  5. ヒト型ナノセラミドと従来のヒト型ナノセラミドを比較すると浸透率とその効果に圧倒的な差が出る。(図1、2を参照)
  6. ヒト型セラミドと他のセラミドを混ぜてしまうと、セラミド効果そのものが著しく低下する。(図3を参照)

この中で注目すべきは、一般的なヒト型セラミドの効果の低さでしょう。図1の浸透率を見ると、大して肌の中に浸透していないのが分かります。

そのため、図2で分かるように、バリア機能もあまり回復していません。この程度なら、通常の保湿クリームで実現できるのではないでしょうか?

体内のセラミドと親和性の高い従来のヒト型セラミドでもこの程度なのですから、他のセラミド効果の低さは言うまでもありません。

ただ、ヒト型ナノセラミドを塗れば、バリア効果がアップするということは、もしかしてセラミドが吸収されているのかも・・・もし、そうなら私がここまで言ってきたことが間違っている可能性があります。

この実験結果から分かることは・・・

  • ヒト型セラミド以外は、体内のセラミドと親和性が低いために高い効果は期待できない。
  • ヒト型セラミドであっても、高い効果は期待できない。
  • ヒト型セラミドと他のセラミドを混ぜてしまうと、著しく効果が下がる。
  • ヒト型ナノセラミドは、浸透力も高く効果が期待できる。

不安を抱えつつ、次を見て行きましょう。

ヒト型ナノセラミドの研究(続編)で実証されたセラミド効果とは?

2014年には富士フィルムから、『ヒト型ナノセラミド』の効果について、続編がリリースされました。

ここで新たに分かったことを簡単にまとめると・・・

  1. ヒト型セラミドが、角層細胞の外壁を形成するタンパク質の産出を促進する効果があることを発見。
  2. ヒト型セラミドが、肌内部でセラミド生成において重要な役割を果たすセラミド合成酵素の産出を促進する効果があることを発見。
  3. 従来のヒト型セラミドとヒト型ナノセラミドを比較実験すると、セラミドの効果に影響をもたらすタンパク質「INV」、「TGase」ともに、ヒト型ナノセラミドの方が両タンパク質の産出促進効果があった。(図2、3、4を参照)
  4. 従来のヒト型セラミドとヒト型ナノセラミドを比較実験すると、ヒト型ナノセラミドの方がSPT産出促進効果があった。(図5を参照)

ヒト型セラミドの効果が具体的になりました。

ヒト型セラミドが浸透して体内のセラミドに吸収される訳ではありませんでした。角層細胞の外壁を作るタンパク質とセラミド合成酵素の生成を促進する効果でした。セラミドが体内のセラミドに吸収されていなくてよかったです。

もし、「ヒト型セラミドが体内のセラミドに吸収されている」なんて言われたら、このサイトの大半を削除しなければならないです。まぁ、些末なことですが・・・。

それにしても、従来のヒト型セラミドの効果の低さが目立ちます。

「INV」、「TGasa」の比較実験では、皮膚モデルを使ったので浸透力の問題(分子量が大きいために肌に浸透しづらい)かなと思ったのですが、SPTの比較実験では、(肌に浸透する必要のない)表皮細胞を使っています。

この場合、従来のヒト型セラミドが持つ”分子量の大きさ”というデメリットがかなり軽減されるはずですが、ヒト型ナノセラミドと大きな差が出ています。

もしかすると、浸透力以外にも、従来のヒト型セラミドの効果が低い理由があるのかもしれません。

この実験から新たに分かることは・・・

  • ヒト型ナノセラミドが効果的に角質細胞の外壁を強くすることが期待できる。
  • ヒト型ナノセラミドが効果的にセラミドの産出量を増やすことが期待できる。
  • 従来のヒト型セラミドに比べて、ヒト型ナノセラミドが持つ「INV」、「TGasa」、「SPT」の産出促進効果が圧倒的に高い。
  • 従来のヒト型セラミド浸透力の低さ以外にダメな要素がほかにあるかも。
  • ヒト型アシルセラミドの研究で実証されたセラミド効果とは?

それでは最後に一番新しいセラミド効果の実験を見て行きましょう。

さらに続いて実証されたセラミド効果とは?

2015年の『ヒト型アシルセラミド』についてのリリースです。

ここで新たに分かったことをまとめると・・・

  1. 細胞間脂質には、短周期ラメラと長周期ラメラがあり、長周期ラメラの形成に深く寄与するヒト型アシルセラミドはヒト型セラミドにも増して溶解性が低く、水にも油にも溶けないため扱いが困難だったが、20ナノメートルサイズのナノ化に成功することでこの問題をクリア。(図2を参照)
  2. 従来のヒト型アシルセラミドに比べて、ヒト型ナノ化アシルセラミドの浸透性は6倍。(図3を参照)
  3. ヒト型アシルセラミドがダメージ肌モデルの回復を確認。(図4を参照)
  4. ヒト型ナノセラミド単体より、ヒト型アシルセラミドと一緒に使用したほうがバリア機能への効果は高い。(図5)

ラメラ構造にも2種類あって、『短周期ラメラ』と『長周期ラメラ』があります。ヒト型セラミドは、短周期ラメラに効果はあるのですが、長周期ラメラには効果がありません。

そこで、長周期ラメラに効果のあるヒト型アシルセラミドの出番というわけです。でも、このヒト型アシルセラミドが非常に厄介です。ヒト型セラミドも溶けにくくて厄介なのですが、油剤には溶けます。

一方、ヒト型アシルセラミドは、油剤にすら溶けにくいのです。だから、ヒト型アシルセラミドは化粧品にもあまり使われていませんでした。溶けにくいということは、低濃度でしか配合できず、効果がないということです。

また、安定性も悪くなり、変質するリスクが増えます。でも、ヒト型アシルセラミドは、ナノ化することでそのデメリットを払拭したようです。

こうすることで、短周期ラメラと長周期ラメラ、双方にセラミドの効果が発揮されるということです。確かに、いくらセラミドに効果があると言っても、どちらか一方だけのラメラしか効果がないなら片手落ちですよね。

それにしても、相変わらず従来のヒト型アシルセラミドは効果低いんですね。

ここまでくると、「ナノ化してないセラミドって何?」という感じになります。

この実験から分かることは、

  • 従来のヒト型アシルセラミドより、ヒト型ナノアシルセラミドの方が効果が期待できる。
  • いくら短周期ラメラに効果的なヒト型ナノセラミドでも、それだけでは不十分。長周期ラメラに効果のあるヒト型ナノアシルセラミドも併用して使わなければ意味がない。
  • やっぱり従来のヒト型アシルセラミドは、イマイチだった。

さて、いかがだったでしょうか?

どうやら、化粧品のセラミドは、体内のセラミドに吸収されることはないものの、セラミドを増やす効果はありそうです。ただ、すべてのセラミドではありません。使って効果のあるセラミドと効果のないセラミド。また、セラミドの配合条件もあります。

同じ使うならあまり効果のないセラミドは避けて、効果の期待できるセラミドを使いたいものです。そこで、富士フィルムが行った3つの実験結果から、使ってはいけないセラミドと使うべきセラミドの条件をまとめます。

『使ってはいけないセラミド』と『使うべきセラミド』

あまり効果が期待できないセラミド

  • ヒト型セラミド以外のセラミド全般
  • 分子量が100~300ナノメートルサイズのセラミド
  • 油剤や乳化剤にしか解けないため低濃度でしか配合できない従来のヒト型セラミド
  • 油剤にすら溶けにくく、ヒト型セラミド以上に低濃度でしか配合できない従来のヒト型アシルセラミド
  • ヒト型セラミドと非ヒト型セラミドが配合されているセラミド化粧品

既存のヒト型セラミドよりも
高い効果が期待できるセラミド

  • 20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型セラミド
  • 20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型アシルセラミド
  • ヒト型セラミドのみ配合されたセラミド化粧品

もっとも高い効果が期待される
理想的なセラミドとその配合量

  • ヒト型ナノセラミド1%+ヒト型ナノアシルセラミド0.1%を配合したセラミド化粧品

このような結果になります。

どうでしょうか?
ヒト型ナノセラミド、ばんざーい!
ヒト型アシルセラミド、最高!
これで乾燥肌や敏感肌、アトピー肌まで改善できるとなると、多くの人が小躍りしたくなるかもしれません。

それでも私が
ナノ化したセラミドを使わない理由

でも、私は、ヒト型ナノセラミド、ヒト型アシルセラミドを化粧品に配合しようとは思いません。なぜなら、これらの研究結果を見ても、化粧品として作ったときに、研究結果と同じセラミド効果が本当にあるとは思えないからです。

このような研究結果には一定の価値があります。セラミドにも高い効果がある可能性があります。でも、それをそのまま鵜呑みにできません。

なぜなら、今回のセラミド研究で出た成果がそのまま化粧品で同じ効果を発揮するとは限らないからです。

いや、むしろ研究結果と同等の効果が現れない場合の方が多いでしょう。私たちが知らないだけで、日の目を出ない研究結果は星の数ほどあります。

今回のセラミド効果についても、その可能性があると考えています。

それでは、私がナノ化セラミド効果に疑問を持っている点をお話ししましょう。

高い効果を持つセラミドの『安全性』は?

私は、化粧品に最も大切なのは、『効果』よりも『安全性』だと考えています。

だから、可能な限り安全性を高め、その後に効果を追い求めます。

今回のセラミドの研究には『培養表皮モデル』が使われています。人工的に皮膚に近い状態を作ったものです。

これを用いることは、特に珍しいことではありません。培養表皮モデルができるまでは、動物実験が主流でした。本当に価値がある実験ならまだしも、自社の優位性だけを目指して、無駄に命を奪われた動物がたくさんいました。今では、そのような悲劇がゼロになった訳ではありませんが、かなり少なくなっています。

また、実験に特化したものなので、実験そのものが容易で実験対象の効果が分かりやすくなっています。そういった意味では、すばらしい発明と言えるでしょう。

『三次元モデルの培養と可能性』のP29を見てもらうとイメージしやすいと思います。

本当に素晴らしい培養表皮モデルなのですが、デメリットもあります。

さきほど、ご紹介した『三次元モデルの培養と可能性』のP32『現在の代替法の特徴』を見てください。

簡単に言うと、『培養表皮モデルは、有害性や正確性は分かるものの、リスク評価ができず、安全性が担保できない』とあります。

つまり、『効果は分かりやすいけど、危険性は分からないよ』ということです。

今回の実験結果で、ナノ化されたナノセラミド、アシルセラミドの特筆すべき点は、「INV」「TGasa」「SPT」の産出促進効果です。セラミドが体内に入ることで、体内の成分が増えるのです。とても化粧品原料とは思えない、どちらかと言えば、医薬品に近い効果です。

でも、だからこそ、大きなリスクがはらんでいる可能性があります。

本当に、安全に、私たちにとって都合のいい成分だけを増やすのでしょうか?

その裏で私たちに不都合なことは起きないのでしょうか?

セラミドの医薬品に匹敵する効果の検証は、すべて培養表皮モデルが使われています。

これは、実験する側からすれば、効果が出やすいメリットがあります。なんせ、そのために生み出されたものですからね。培養表皮モデルは、効果が出やすいからスタンダードになったのです。反面、安全性を担保することできません。

つまり、ナノ化されたセラミド、アシルセラミドのすごい効果は、効果が出やすい反面、危険性までは分からないのです。

セラミドの『安全性』が立証できない問題

一部、人の肌を使った実験もあります。

1つ目の実験(肌への浸透性とバリア機能の回復力を高める 「 ヒト型ナノセラミド」を開発)であるヒト型ナノセラミドの角質への浸透量向上と肌バリアの回復力向上実験です。

20歳以上、59歳以下の健常成人と書かれているので、ほとんどの年齢層が網羅されている気がしますが、実際は肌角層への浸透性向上実験が5名、肌バリアの回復力向上実験が14名です。実験の内容がセラミドの安全性とは無関係ですし、仮に関係があったとしても人数が少なすぎます。

そもそも、セラミドの安全性について書かれたリリースはゼロです。

ナノ化されたセラミド、アシルセラミドには体内の成分が増えるという(医薬品のような)高い実験結果がありながら、人の肌を使った安全性を示す実験結果がないことから、私は自分が開発する化粧品にはセラミドを使いません。

また、安全性を立証した実験結果がないことそのものが疑問です。セラミドに人体の成分を産出促進する効果があるなら、それに伴う危険性も調べる必要があると思います。

にもかかわらず、安全性に関する実験結果が何ということは、2つの要因が考えられます。

【1】実は、化粧品化した際には今回行ったセラミドの実験結果ほどの効果がないから、おのずと危険性もない。だから、安全性を調べる必要もない。
 
【2】ナノセラミドには何らかの危険性がある。

ただ、危険性があれば、化粧品原料として認められないので、私見ですが【1】ではないかなと推察しています。

ナノ化されたセラミドの
化粧品に配合されたときの本当の効果

次に、ヒト型ナノセラミド、ヒト型ナノアシルセラミドの効果を際立たせる今回の実験に対しての疑問です。

簡単に言うと、ヒト型ナノセラミド、ヒト型ナノアルシセラミドの効果を高く見せるために過剰な演出をしているのではないかということです。

実験の趣旨は、従来のヒト型セラミドの効果より、ナノ化されたヒト型セラミドの方がどれだけ優れているかを検証することです。だから、従来のヒト型セラミドを比較対象をするのは当然です。

でも・・・、ここから大切です。
よ~く聞いてくださいね。

私たちは、従来のセラミドより優れた効果を持ったセラミドを望んでいる訳ではありません。

化粧品として使用したときに、高い保湿効果とバリア効果が発揮されることを望んでいます。従来のヒト型セラミドより、保湿効果やバリア効果が高いからと言って、既存の保湿成分より優れていることにはなりません。

だから、今回の実験内容では、従来のヒト型セラミドの効果が低いことは分かりましたが、ヒト型ナノセラミド、ヒト型アシルセラミドの効果が高いという根拠にはならないのです。

他の成分と比較するとどうなるの?

例えば、2010年に行われた肌バリア回復力向上実験。従来のヒト型セラミドよりもヒト型ナノセラミドの方が効果的なのは分かりました。じゃあ、白色ワセリンや尿素クリームと比較したらどうなのでしょう?

私のように、「そもそも従来のヒト型セラミドって、ただの油分でしょ。だから、そんなにすごい保湿効果やバリア効果ないでしょ。」って人に対して、「従来のヒト型セラミドよりすごいんです!」って言われても、あまり説得力がありません。

むしろ、「やっぱり従来のヒト型セラミドって保湿効果あんまりなかったんだな」と納得してしまいます。

10倍配合したとしても、
10倍の効果は得られない問題

そもそもこういう「当社比〇倍」とか「〇%アップ」って信用できなんですよね。

「セラミド配合量が、10倍アップ!(当社比)」みたいな広告、よく目にしませんか?

よく考えてみましょう。

既存の化粧品に配合されていたセラミドの割合が0.001%の場合、今回の化粧品に0.01%配合した場合、確かに10倍ですので、正しい表現です。

でも、現実的なセラミドの効果ってほぼ一緒です。10倍入っているからと言って、効果が10倍になるわけではありません。

結局、広告宣伝のために効果が10倍になったと錯覚させているだけです。だから、私はこういうの見ると怪しんでしまいます。

だからこそ、従来のヒト型セラミドだけではなく、そのほかのバリア機能の高い成分とも比較すべきだと思います。肌バリア回復力向上のグラフにも白色ワセリンを足しておけば、保湿力の強い理論補強になります。

もし、白色ワセリンの数十倍のバリア効果が示された棒グラフがあれば、何の文句もありません。セラミド効果のすごさをもろ手を挙げて認めます。

でも、そんな比較実験は目にしません。セラミド以外で比較してあるのは、水だけです。ということは、「やっぱりセラミドは、ナノ化されていても大した保湿効果ないんだろうな」と私は思います。

3つの成分が増えると、すごい効果になるの?

ヒト型ナノセラミドの「INV」「TGasa」「SPT」産出促進効果にも同じことが言えます。

水、ヒト型セラミド、ヒト型ナノセラミドで比較されています。水が基準となっているのですが、そもそも水に「INV」「Tgasa」「SPT」の産出促進効果はありません。

つまり、水というのは、何もしていない状態と同じです。当たり前ですが、私たちの皮膚は、何もしなくても「INV」「TGasa」「SPT」を産出しています。そして、それはすごく微量です。

その微量なものに対して、ヒト型アシルセラミドの場合、INVで1.2倍、TGasaで2.3倍、SPTで1.7倍って、どれだけすごいことなんでしょうか?そもそも水の場合の産出量が分からないので判断はつきませんが、誤差の範囲でしょう。

本当に、その程度の産出量が促進されたからと言って、肌の保湿効果とバリア効果が高まるのでしょうか?もっと言うなら、3つの体内成分が増えただけで、それほどすごい効果があるのでしょうか?

3つの成分を詳しく見てみると

「INV」は、角層細胞の外壁を構成するタンパク質のひとつです。「TGasa」は、「INV」などの多層細胞の外壁を構成するタンパク質を同士を結合する酵素の一つです。

2つの成分は、あくまでも角層細胞の外壁とそれを結合するのに効果的とされています。だから、細胞間脂質には関係ありません。

説明の最後には、『2つの量が増えると強固な構造の角化細胞の外壁が期待できる』と書かれています。あくまで、『期待できる』と書かれているだけで、『できる』とは書かれていません。

さらに、『2つの成分が増えると保湿効果やバリア効果が高まることが期待できる』とすら書かれていません。

角質細胞の外壁を構成するタンパク質は、INVの他にもあります。INV単一の成分が増えるだけで、本当に強固になるのでしょうか?他のタンパク質は増えなくていいのでしょうか?

TGasaも同じです。TGasaが増えるだけで結合力が増えるのでしょうか?他の酵素は無視していいのでしょうか?

ひとつの成分だけで、その機能を果たしているならまだしも、複数の成分で機能を果たしているなら、そのすべての成分を増やす必要性があるように感じます。

「SPT」は、セラミドの生成反応を促進する酵素です。これは、セラミドそのものの量が増えるので細胞間脂質にも関わります。

説明の最後には、『SPTが増えることでセラミドの生合成が促されることが期待できます』と書かれています。さっきの2つの成分と同じで、『期待できる』どまりです。高い保湿効果やバリア効果には触れていません。

そもそもセラミドの産出量が増えたとして、それだけで保湿効果やバリア効果が高まるのでしょうか?

『セラミド』の効果は『セラミド』では得られない、という問題

セラミドが生まれて、細胞間脂質になるまでの流れを見てみましょう。

セラミドは、表皮の有棘層や顆粒層で生成されます。その後、一旦グルコシルセラミド、スフィンゴミエリンの形で表皮細胞膜リン脂質などとして蓄えられます。

そして、細胞外へと排出されて、βグルコセレブロシダーゼとスフィンゴミエリナーゼの作用を受けて、再びセラミドとなり、細胞間脂質で機能を果たします。

このように、セラミドは生まれてから一度違う成分に変質して蓄えられて、さらにセラミドになります。

となると、セラミドが増えると、変質したセラミドを蓄える力、その後、セラミドに変えるβグルコセレブロシダーゼとスフィンゴミエリナーゼの量も増える必要があります。この2つの要素を無視して、セラミド単体の産出量だけ増やして、本当に効果があるのか疑問です。

どちらにせよ、ヒト型ナノセラミドで、実験結果から分かるのは、この3つの成分が増えるかどうかは『期待できる』程度で、増えたとしても高い保湿効果やバリア効果との関係性は謎です。

不確かな『濃度』問題

他にも不確かな部分があります。

既存のヒト型セラミドに比べると、ヒト型ナノセラミドはナノ化したために「高濃度に配合できる」とあります。浸透力や効果の差は検証してあるものの、濃度については明記されていません。

既存のヒト型セラミドは、その特性上、配合率を上げるのが困難です。たった1%配合するだけでも結構大変です。

一見、ヒト型セラミドが1%以上配合されているように見えても、実際は、混合原料である場合が多いです。ヒト型セラミド1%と言っておきながら、実は、ヒト型セラミド0.1%と非ヒト型セラミド0.9%、合わせて1%という具合です。

これは、完全な騙しですね。

一方、ヒト型ナノセラミドは、ヒト型セラミドと比べて高配合できるとのことですが、一体どの程度配合できるのかが不明です。

従来のヒト型セラミドが低濃度配合しかできず、ヒト型ナノセラミドが高濃度配合が可能というなら、どれほどの量が配合できるのか?

そもそも『低濃度配合』と『高濃度配合』に明確な基準があるわけではないので、明確にしないとただの言葉遊びになり、もし、それほど変わらないのであれば、当社比と同じで騙された感がハンパじゃありません。

ヒト型ナノセラミドは、ヒト型セラミドのように油剤や乳化剤に溶けている訳ではありません。分散されています。だから、高配合と言いながら、当然、配合量にも限界があります。

その限界値が油剤や乳化剤に溶かすのと比較して、どの程度、分散できるのかを示す必要があります。

100mlの溶剤に、最高何gのセラミドが配合できるかを明記するだけです。セラミドの配合量なんて、絶対にデータとして持ってるはずなのに公表しないということは、もしかして、大して既存のセラミドと差がないのでは?と勘ぐってしまいます。

こういう実験結果って、目的以外のことは一切書かないし、目的を阻害することも書きません。そんなの書いたら、この実験の意味そのものが無くなりますからね。これも一般的なことで、別に悪いことではありません。

そして、研究結果や論文を重視する人が多いですが、この段階では『期待できる』程度です。これを製品化した化粧品に同等の効果を発揮させるには、それまで以上の高い壁があります。決して、セラミドの研究結果=セラミド化粧品の効果ではありません。現段階では、両者は完全に別物です。

以上の理由から、私は、「今回の実験結果がセラミドに高い保湿力がある根拠にはならない」と判断しました。

効果があるならぜひお願いしたいこと

それに、繰り返しになるのですが、ヒト型セラミドやヒト型ナノセラミドに、本当に噂されるほどの高い保湿効果とバリア効果があるなら、アトピー性皮膚炎の保湿外用薬として認可が下りて保険が適用できるはずなんですよね。

そもそもヒト型セラミドは高額な原料なので、もし、本当に効果があればアトピー肌に苦しむ患者さんは安価で使用できるので助かります。ヒト型ナノセラミドは、従来のヒト型セラミドよりさらに高額でしょう。

ちなみに、ヒト型ナノセラミドとヒト型アシルセラミドの入った化粧品は、40gで9,720円。60gで12,960円。

金銭感覚は人それぞれです。でも、私は、これまで検証したセラミドの効果に対して、この金額は高額だと感じます。

しかも、この商品に実験結果で効果のあったヒト型ナノセラミドとヒト型アシルセラミドが2つ入って、Wヒト型ナノセラミド配合と書かれてあります。でも、実験でセラミドが増える効果が示された量のセラミド(ヒト型ナノセラミド1%+ヒト型ナノセラミド0.1%)が配合されているかどうか分かりません。

せっかく実験レベルとは言え、優位な結果が出たのです。しかも、その実験結果を活かした化粧品を発売したのです。セラミド化粧品の一番の広告文句として、『ヒト型ナノセラミド1%+ヒト型ナノセラミド0.1%、セラミドを合計1.1%高濃度配合』と大々的に表示すればいいのです。

でも、セラミドの配合量は一切記載されていません。もしかしたら、1.1%も配合されていないのかもしれません。そして、その理由は、化粧品化した際に、その効果は失われているからかも・・・。もしくは、高濃度と言いながら、1.1%の量を配合できないのかも・・・。

完全に私の推測ですが、もし、私が研究結果に自信があり、この価格をつけるなら、絶対に1.1%配合して、大きな声で宣伝します。配合量の記載が一切ないのは、本当に不思議です。

【まとめ】私が考えるセラミド効果と目指す化粧品の効果

『保湿効果』や『バリア効果』を発揮する方法は一つだけではありません。そもそも、「セラミドだけを増やせば肌トラブルが改善する」とも思えません。乾燥肌・敏感肌・アトピー肌には、多くの要因があります。たったひとつの体内成分を増やすだけで解決すると考える方が無理があります。

もし、化粧品のセラミドが劇的に体内のセラミドを増やすと仮定できても、それはセラミド不足が原因で乾燥肌・敏感肌・アトピー肌に効果があるだけです。そういった意味では、非常に限定的です。

やはり、現状では実験レベルで、現実的に化粧品に配合した際、研究結果のような結果はもちろん、高い保湿効果やバリア機能は発揮できないと考えます。

また、既存のヒト型セラミドはともかく、ヒト型ナノセラミドには、体内の成分を増やすという効果ゆえに安全性の不安が付きまといます。

このような限定的な効果と危険性が付きまとう高額なセラミドを使うぐらいなら、既存のスキンケアで最も大切な『保湿』をしっかりと行ったほうが良いと思います。

私が化粧品に携わるようになり20年以上、いろいろなトラブル肌に悩む人の声を聞いてきました。その中には、驚くべき共通点がありました。

それは、肌トラブルに悩む人の多くは、正しく『保湿』ができていないという点です。

しかも、保湿ができていないことに無自覚です。自分では、「きちんと保湿ができている」と思っています。それは特に、通常のスキンケア、化粧水・乳液・美容液などを使ってる人に多い傾向にあります。

あなたは、いかがでしょうか?
化粧水や乳液を使った通常のスキンケアをしていませんか?

実は、保湿には、『効果のある保湿』と『効果のない保湿』があります。長年、肌トラブルに悩む方の多くは、知らず知らずのうちに『効果のない保湿』を続けています。

もしかしたら、あなたの行っているスキンケアは、『効果のない保湿』かもしれません。『効果のない保湿』をいくら頑張っても肌トラブルは改善しません。

セラミドなどの美容成分に高い美容効果を期待する前に、一度、あなたの保湿を見直してみはいかがでしょうか?

もし、あなたが、、、

  • 長年スキンケアを行っているのに、肌トラブルが改善しない
  • だから、セラミドのような美容成分に頼りたくなった
  • もう、スキンケアに無駄な時間とお金をかけたくない

と思っているなら、ぜひ、『効果のある保湿』を知ってください。

「保湿効果の違いって何?」と疑問に思った方は、今すぐ『効果的な保湿と効果のない保湿の違いとは?』をご覧ください。きっとあなたの美肌づくりのお役に立つはずです。