世の中には、『温泉』を化粧品に配合した化粧品があります。

主には、水分の多い化粧水に温泉水が配合されたとされる、『温泉化粧水』です。

温泉の肌に関する効能は、環境省が定めています。そのため温泉で化粧品をつくると温泉の効果が化粧品にプラスされるように感じます。

でも、それは本当なのでしょうか?

温泉化粧水は、通常の化粧水より効果があるのでしょうか?

その疑問に答えていきたいと思います。

また、今回、『温泉化粧水』について調べる中で、乾燥肌や敏感肌の人が温泉に入る際に知るべき知識も多数発見しました。

私自身が敏感肌で乾燥肌でもあるため、温泉に入った際ピリピリと刺激を感じたり、肌が赤くなったことがあったのですが、その謎が解けました。だから、温泉化粧水に興味がなかったとしても、温泉に入る機会のある人は読んでみてください。きっとお役に立つと思います。

温泉化粧水に使われそうな、美肌に関係のある温泉効果とは?

温泉は、昭和23年に制定された「温泉法」により、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、表1の温度又は物質を有するもの
引用元:環境省『温泉の定義』より

と定義されています。

そして、その泉質によって10種類に分かれています。その中で、環境省が定めている肌への効果がある泉質は、以下の5種類です。

  1. 塩化物泉:皮膚乾燥症
  2. 炭酸水素塩泉:皮膚乾燥症
  3. 硫酸塩泉:皮膚乾燥症
  4. 酸性泉:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症
  5. 硫黄泉:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、皮膚化膿症

それでは、それぞれを肌の効果に注目しながら、詳しく見ていきましょう。

【1】塩化物泉

塩分が豊富に含まれた温泉です。塩分には、殺菌・抗菌作用があり、それが肌の悪い菌に影響を及ぼすことで、肌に良いとされています。

『皮膚乾燥症』に効果があるとされていますが、なぜ、塩分が肌に付着することで乾燥症が改善できるのかはよく分かりません。確かに、海で泳いだ後は、体がネバネバして気持ち悪くなります。そのネバネバが保湿できているということなのかもしれません。

肌に塩が付着することで汗腺の出口をふさいでしまい、発汗や汗の蒸発が鈍ります。これは、汗本来の役割である温度調節を阻害して体にとっていいことではありません。

でも、汗の蒸発を防ぐことは、水分の蒸散を防ぐともいえるので、乾燥を防ぐことにつながるということなのかもしれません。

ただ、塩分がたくさん含まれていると、切り傷や肌荒れがある場合には刺激となるので避けたほうが良いでしょう。

また、アレルギー体質で皮膚の弱い人、虚弱体質で皮膚の抵抗力の衰えている人は、湯ただれを起こすことがあるので、高温浴や長時間湯船に浸かることを避けましょう。湯ただれとは、温泉に入ることで皮膚が赤くなったり、ピリピリとした痛みやかゆみ、発疹が現れたりする炎症です。

塩分が体に残っていることは、肌にとっていいことではないので、お風呂を出る際には水道水でしっかりと洗い流しましょう。また、塩分によって肌中の水分が少なくなっているので、お風呂上りには肌をしっかり保湿しましょう。

【2】炭酸水素塩泉

炭酸水素塩を含む化合物を主成分とした泉質です。

アルカリ性を示す温泉が多く『美人の湯』と言われることが多いです。炭酸を多く含有する場合もあり、『炭酸泉』と言われています。

お湯がアルカリ性なので、入浴すると肌がヌルヌルします。このヌルヌル感が、肌に潤っているように感じて、肌に良い印象を持ちます。実際は、化学反応によって、皮脂から石鹸に似た物質が作られることがヌルヌルの原因です。

また、強いアルカリ性の場合は、表皮のたんぱく質が溶けてヌルヌルします。化粧品の効果で言うと、ピーリング効果に近いですね。

皮脂膜や表皮を溶かすので、敏感肌や乾燥肌の方は刺激を感じます。乾燥肌で敏感な肌の私は、このタイプの温泉に入ると、皮膚の弱い部分に刺激を感じて、1分以上は浸かることができません。

私の肌質を受け継いだ現在4歳の息子も、「ピリピリする~><」と言って、10秒も入れません。 また、皮脂膜や表皮を溶かすことで、水分を保持する力が弱まり、水分の蒸散量が増えます。これによって、肌は乾燥して無防備な状態となり、外界からの刺激に弱くなります。 ですから、敏感肌や乾燥肌の人が炭酸水素塩泉に入る場合は、お風呂を上がる際に、体全体を水道水を使ったお湯でしっかりと流してから出て、その後はできるだけ全身を保湿してください。 【3】硫酸塩泉

陰イオンの主成分が、硫酸塩泉の温泉を指します。

含有成分により、カルシウム硫酸塩泉(石膏泉)、ナトリウム硫酸塩泉(芒硝泉)、マグネシウム硫酸塩泉(正苦味泉)に分かれます。

どのタイプも肌への効果として共通しているのは、鎮静効果です。切り傷や、やけどの痛みを和らげる効果があるとされています。

あくまで痛みを緩和する効果なので、敏感肌や乾燥肌が改善するとまではいかないと思います。保湿効果もありません。

炭酸水素塩泉と同様に、皮脂を落とす効果もあるので、お風呂を出るときには水道水を使ったお湯でしっかりと全身を洗い流しましょう。

【4】酸性泉

酸性度の高い温泉を指します。

刺激が大変強い泉質です。酸性泉で有名な草津温泉は、温泉に1円玉を浸けておくと1週間で溶けてなくなるそうです。

酸性泉の中でも酸性度が強い秋田県の玉川温泉のpH値は1.2で、何と胃液より酸性度が高いのです。

酸性度が高いため、酸性泉は殺菌力が非常に強く、皮膚病に効果があるとされています。

まさに、皮膚病に特化した泉質と言えるでしょう。特に、白癬症、疥癬、乾癬といった寄生系の皮膚病に効果があります。水虫にも効きます。

これだけ酸性度の高い温泉ですから、入浴の際に注意が必要です。

中には、酸性泉の温泉に入る場合、体をボディソープや石鹸などで洗わない人もいます。汚い気がしますが、入浴前に肌の角質をとると、酸性泉の刺激が肌に悪影響を及ぼすことがあるからです。

特に、乾燥肌や敏感肌の人は、この方法に倣ったほうが良いでしょう。

酸性泉の場合は、風呂から出る際は、水道水のシャワーなどで体に付着した温泉成分をしっかりと洗い流しましょう。体に酸性泉を付着させたままにしておくと肌が荒れる場合があります。そして、その後は全身をしっかりと保湿しましょう。

【5】硫黄泉

温泉の特異作用が硫黄によるものと判断された温泉を指します。

硫黄泉は、解毒作用があるため、慢性皮膚病に良いとされます。

さらに、皮膚の角質を軟化溶解するので、角化症、慢性湿疹、苔癬(たいせん)、慢性膿皮症等の皮膚病のほか、寄生虫の疥癬(かいせん)にも効果があります。

ただし、硫黄泉は、身体に強い変調作用を与えるため、病弱な方や高齢者はなるべく避けたほうがいいとされています。

また、皮膚や粘膜の弱い人は湯あたりや皮膚炎を起こしやすいので注意が必要です。

すさまじい効果がありそうですが、その反面、危険にあふれていますね。解毒作用があるのに、病弱な方や高齢者は避けたほうがいいいなんて…効果を得たい人こそが使えないような気がしますね。

本当のところ、温泉に美肌効果はあるのか?

私自身は、温泉のおかげで自身の乾燥肌や敏感肌が改善した経験はありません。逆に、ピリピリと刺激を感じたり、赤くなったり、日焼け後に入ってしまったことで症状が悪化した経験があります。

これまでのところ、私の周りにも温泉によって、肌トラブルが改善したという報告は聞いたことがありません。

そこで経験者がいるのかネット情報をいろいろと見ていると、温泉宿の女将さんが検証したブログを見つけました。

若女将にはばっちり効いたようですが、長年アトピーに悩んでいた本人いわく
「うちの温泉が自分に合って良かった」とのこと。
これは大きいかもしれません。
ここまであおっておいて無責任なようですが、「泉質別適応症にアトピー性皮膚炎が含まれたこと」イコール、「アトピー性皮膚炎に絶対に効く温泉」ではないということ。
若女将の改善の理由が温泉にあったとは言い切れないのも事実。
引用元:川渡温泉越後屋旅館・小さな宿のブログ

川渡温泉の若女将がひどいアトピー性皮膚炎を患っており、自ら温泉の効果を検証したそうです。その結果、子供の頃から20年以上悩んでいたアトピー肌が1年が改善したそうです。ただ、ブログにも書いてある通り、温泉のおかげで改善したかと言えば、懐疑的です。

温泉の効果もあったかもしれませんが、個人的には『保湿』と『薬』の効果がかなり高いと思います。また、アトピー性皮膚炎の症状は個人差がありますから、症状が重篤なら温泉だけならアトピーが悪化していたのでは?と感じます。

    温泉を利用する際のポイント

  • 温泉に長時間浸かると皮膚が乾燥するので、短時間の入浴にする。
  • お風呂を出るときに、温泉をしっかりと洗い流す。
  • その後、しっかり保湿&薬を塗る。

乾燥肌や敏感肌の人は、温泉を利用際には、ここにあげた基本を守ることが大切です。

そして、温泉の美肌効果とは肌トラブル改善するようなものではなく、ふつうの入浴と同じく、心身をリラックスさせる効果や、体が温まることによる血流促進効果により得られるものだと思っておくほうが安心です。

温泉化粧水に使われる泉質とは

温泉化粧水に一番使われる泉質は、『炭酸水素塩泉』です。

炭酸水素塩泉は『美人の湯』と呼ばれるだけあって、ダントツの人気です。『美人の湯』というイメージと化粧品には親和性もありますし、なにより宣伝がしやすそうです。

逆に、『酸性泉』と『硫黄泉』は、温泉化粧水には使われません。

『温泉禁忌症』という、温泉に入ってはいけない症状があります。禁忌症とはその名の通り、1回の温泉入浴または飲用でも体に悪い影響をきたす可能性がある病気のことを指します。

「絶対に入浴不可能」というわけではありませんが、どうしても入りたい場合は、専門知識をもつ医師の指導を仰ぐ必要があります。

その禁忌症の中でも、『泉別禁忌症』だと、『酸性泉』と『硫黄泉』には入ってはいけません。そもそも『酸性泉』と『硫黄泉』には、皮膚または粘膜が敏感な人、高齢者の皮膚乾燥症の人は入ってはいけないと定められています。

医師の指導が必要な温泉水は危ないので、温泉化粧水に配合できないですよね。

温泉化粧水に配合される炭酸水素塩泉に、美肌効果はあるのか?

『炭酸水素塩泉』と、『ただの水』は違います。含まれている成分が違うので当然です。

では、化粧品に配合する場合はどうでしょうか?

もし、炭酸水素塩泉をそのまま配合するなら、違うでしょう。

でも、色々な成分が含まれた炭酸水素塩泉をそのまま化粧水に配合することはありません

理由は、簡単で、化粧品として安定しないからです。

炭酸水素塩泉には、肌に有効とされる成分以外の成分が色々と含まれています。これは、自然の中でできるものなので仕方がありません。自然発生する中で、色々なものが混じりますから。

こういったものは、非常に不安定であり、化粧品の成分として不向きなものです。

化粧品は安全な状態で作ることを義務付けられています。

【医薬品医療機器等法(薬機法)】

『医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律』第56条に規定される『製造,販売等を禁止される医薬品(化粧品)』
第4項『その全部又は一部が不潔な物質又は変質若しくは変敗した物質からなっているもの』
第5項『異物が混入し,又は附着しているもの』
第6項『病原微生物により汚染され, 第56条に規定される『製造,販売等を禁止される医薬品(化粧品)』:第4項『その全部又は一部が不潔な物質又は変質 又は汚染されている恐れがあるもの』などに該当し,製造,販売することが禁止されている.

化粧品の成分としては不安定な温泉をそのまま使うなんてことはありえません。

天然成分だからこそ、危険な理由

「天然成分が安全」だと信じている人がよくいますが、むしろ逆です。天然成分ほど不安定で、コントロールしにくいものはありません。

異物が入っている確率も、合成物と比べて格段に高くなります。言い換えれば、肌の刺激になる確率が高くなると言えます。

また、何らかの技術を使って、完全に不純物を取り除き、有効な成分だけ抽出できたとしましょう。それでも、有効成分の含有量は作るたびに変わってしまいます。これも自然物の特徴です。

例えば、今日、採取した温泉と1年後に採取した温泉の中身がまったく同じということはありえません。この場合、温泉水を採取するたびに、成分分析をして、その内容にあった化粧品の処方を組み直すことになります。

正直、こんなことやってられません。お金を無限に使っていいなら可能ですが、こんなことをしていたら、一般の人では手に入れることのできない価格になってしまいます。

これらの理由から、温泉水をそのまま化粧水に使うことは不可能となります。

温泉化粧水に温泉を配合する方法

温泉化粧水に、温泉をそのまま使うことはできませんが、ちょっと手を加えれば配合することができます。

温泉水を『精製』して、『純水』にするのです。

化粧品を作る立場から言えば、温泉に含まれるすべての成分、例え肌に有効成分であったとしても、それは化粧品にとって邪魔な存在です。

特に、量が変化するのはやっかいです。化粧品内のどのような成分と結びつくかが分からないので、製品自体が不安定になります。化粧品の不安定さは、腐敗などの変質に繋がり、大変危険です。

それに、そのようなリスクを冒す必要がありません。なぜなら、そういった有効成分は後からいくらでも配合できるからです。

配合量を合わせれば、温泉と全く同じ有効成分が含まれた化粧水を作れます。そして、そのほうが製品としての安定性が高いため安全で、原材料も安定して購入できることから適切なコストで作ることができます。

だから、すべての温泉化粧水に配合する温泉は、『精製』という処理がなされます

精製方法は、さまざまですが、結果として『純水』になります。

ただの『水』が一番、化粧品作りには適しているのです。

ちなみに、私が化粧品を開発するときはイオン交換水を使っています。

一般的な化粧水も、純水を使っています。

温泉化粧水に使われる温泉は、精製されて純水となります。

普通の化粧水に使われる水も、精製されて純水となります。海洋深層水や電解水なんかも同様です。

だから、全成分表示を見ても、『水』と表記されています。
 
違うことと言えば、「この化粧水の水には、温泉が使われています」と宣伝できることぐらいです。

温泉を使っているからと言って、そのまま配合しているわけではありません。

あくまで温泉由来なだけで、その後は精製され、純水となったものを使用し、温泉化粧水は作られています。

これが、温泉化粧水の真実の姿です。

 
現在、温泉は苦境に立たされています。

少し古い情報ですが、温泉地の宿泊施設数は平成7年をピークに右肩下がりです。

多くの温泉が廃業しています。原因は、公衆浴場の台頭、つまりスーパー銭湯などの攻勢によるものです。

だから、少しでも売り上げを上げるために、専門外のことにも挑戦しなくてはなりません。その一環が、化粧品を作ることだと言えます。

個人的には、誤解を生む販売方法はどうかなと思いますが、温泉の気持ち良さ自体は私も好きですから多少の同情はあります。

だから、温泉化粧水だからと特別な効果を望むのではなく、普通一般の化粧水として使用する。そして、温泉化粧水に温泉のような効果を期待するのではなく、温泉化粧水に配合されている温泉を応援するつもりで使うのがベストだと思います。