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30歳の時、私はアルバイトをしていました。

当時の私は、名ばかり『社長』です。独立したはいいものの、仕事がうまく行かず八方ふさがり。資本金はどんどん減っていき、日銭すらも無くなり、そのプレッシャーから『睡眠障害』になりました。その状態が長く続き、やがては『不眠症』に。

そこで、病院に行って、睡眠薬を処方してもらったのですが、まったく効果なし。医師に、3度ほど「この睡眠薬は効果がないから、もっと強い効果の薬をください」と言ったら、最後には、「この睡眠薬は最強です。ただ、多用しないでください」という危険なにおいがプンプンする睡眠薬を処方されました。その結果、それまで2日に1度は眠れていたのが、3~4日に1度しか眠れなくなりました。(苦笑)

私はもともと眠るのが嫌いなので、眠れないこと自体は大した問題ではないのですが、時折、夜中に孤独感に襲われます。

夜中の2時から5時頃って、当時はテレビ番組もやっていないし、外も静かです。人の気配がまったくありません。何かやることがあればいいのですが、仕事がうまくいってないので、やることもありません。このヒマな状況と、孤独感が精神的にきつかったです。

だから、「どうせ眠れないなら、深夜のバイトでもしよう」と考え、近くのビジネスホテルで、20:00~26:00までバイトをすることにしたのです。

社長で30歳なのに、深夜のアルバイトにいそしむ日々

当時は、散髪も行けないほど極貧だったので、生活費も稼げて一石二鳥でした。ただ、30歳にもなり、一応社長の肩書があるのに、バイトの面接を受けるのは、なかなか恥ずかしかったです。

面接官:「30歳で、この時間を希望ということは、昼間は何かしてるんですか?」
私  :「はい、一応、会社をやってます」
面接官:「はっ?じゃあ、社長なんですか( ゚Д゚)??」
と、こんなやり取りを覚えています。面接した人も、めちゃめちゃ怪訝な顔をしていました。

そんな私を不憫に思ったのか、無事採用決定!

バイト先は、ホテル内にあるちょっと高級な飲食店で、10代の後半から20代中盤のバイトで運営されていました。年の差も結構あり、価値観も違ったのですが、私の精神年齢が低いせいか、「オジサンなのに深夜にバイトして大変だな~」と若者に同情されたのか、バイトの人たちには温かく迎えてもらえました。

不眠症ゆえ、アルバイト後も遊ぶ日々

私は、相変わらず眠れないので、深夜2時にバイトが終わった後もヒマです。だから、同じようにバイト後、ヒマな人間を集めて遊ぶようになりました。

いつの間にか、それが広がって、バイトに入っていない人まで深夜2時頃に集まるようになり、カラオケに行ったり、ビリヤードをしたりと、倒産しかけの会社の社長として、かなり問題のある日々を過ごしていました。

そんなある日、いつもたまり場になっている一人暮らしのA君の家でお鍋を食べることになりました。A君は実家の広島に里帰りしており、その際、おいしい牡蠣をお土産に買って帰ってきてくれるとのこと。

いつものメンバーに声をかけると、総勢8名が参加。そのうち4名は牡蠣が嫌いなので、ブタ鍋を一緒にすることになりました。私はもちろん、牡蠣鍋チームです。

開始時間は、少しでも新鮮な牡蠣を食べるために、A君の帰る時間に合わせて18時。 家のカギを預かって、みんなで用意しながらA君の帰りを待っていました。そして、18時。準備は万全です。あとは、主役の牡蠣を待つだけです。

待つこと1時間。19時になっても、A君は帰ってきません。携帯電話も通じません。仕方がないのでブタ鍋チームには、先にスタートしてもらいました。20時、まだA君は帰ってきません。

牡蠣鍋チームの隣では、ブタ鍋チームがハフハフ言いながら、豚肉を美味しそうに食べています。そろそろ締めのラーメンを投入する様子。 牡蠣鍋チームは、おなかペコペコ。 豚肉チームは、気を使って「こっちの鍋食べたら?」と言ってくれるのですが、人数分の量しかないので、私たちが食べると、ブタ鍋チームの取り分が減ってしまいます。

彼らは牡蠣を食べることができないので、単純に食べる量が減ってしまうのです。それが申し訳ないのと、豚肉よりも牡蠣が食べたい欲求と、「ここまで待ったのだから初志貫徹したい!」という意味不明なプライドのようなものが目覚めていました。

さらに、待つこと1時間、開始時間から3時間が経過した21時頃、やっとA君が帰ってきました。

待ちに待った牡蠣鍋の結果・・・

牡蠣チームは、飢えた野獣となってA君に「おせーよ!」と罵詈雑言を浴びせながら、牡蠣を出すように迫ります。A君は、その迫力に押されながら、リュックから『生牡蠣』とデカデカと書いた牡蠣を出すや否や奪い取り、即、鍋に投入。

あまりに空腹になっていたために、鍋が湧く時間が待てません。牡蠣鍋チームのイライラを見ていたA君は、得意げに「新鮮な牡蠣だから、ちょっとしゃぶしゃぶするだけでいいよ」とナイスアドバイス。

A君を含めた4人は、しゃぶしゃぶ程度の牡蠣を貪り食いました。

いや~、その時、食べた牡蠣は今までのどの牡蠣よりもおいしかったです。火の通りも絶妙で、ゆで卵半熟派の私には、最高の食感でした。

たっぷり極上の牡蠣を堪能して、締めのラーメンも食べて、おいしいお酒も飲んで大満足!『空腹は最高のスパイス』と言われますが、この時ほどそれを実感したことはありません。

さて、そろそろ後片付けをしようとしたときに、私の目に信じられない光景が飛び込んできました。それは、乱雑に引き裂かれて床に無造作に投げ捨てられた牡蠣の袋です。

大きな文字で『生牡蠣』と書かれた横に、小さな囲いの中に小さな文字で『加熱用』と書いてあったのです。噂で、「貝類は、食あたりすると地獄のような苦しみを味わう」と聞いたことがあります。

早速、A君を問いただすと、「大丈夫だって。生って書いてあるから。加熱してもおいしいよってことだよ!」と今から考えると意味不明な説明。

ただ、この時は飲んで食って酔っぱらってフラフラで、まともな判断ができず、不覚にも「なるほど。さすがA君、広島育ち!」と納得してしまいました。ほんと、アホでした。

そして、翌日。

私と牡蠣鍋チームの一人がバイトに入っていました。夜の7時から入ったのですが、お互い体に不調を感じていません。健康体そのものです。

内心ほっとしながら働いていたのですが、忘れもしないそれから1時間後の夜8時。 地獄の幕開けです。

いきなり気分が悪くなり、強烈な吐き気がして、トイレでリバースしてしまいました。私がフラフラと休憩室のトイレから出てくると、昨日の牡蠣鍋メンバーが、机に突っ伏してもがき苦しんでいます。同じように吐き気がするらしく、私がトイレから出ると交代でフラフラと入っていきました。

ほんの5分前まで健康そのものだったのに、そのときは、頭とお腹に激痛が走っており、エンドレスの吐き気が続きます。とてもバイトをできる状態じゃないので、即刻帰宅。歩くのもツラくて、文字通り、這って帰りました。

帰って熱を測ると、39度を超えていました。絶え間ない腹痛と、新たに下痢が発生。高熱、腹痛、下痢のトリプルコンボは、相乗効果でどんどんひどくなります。その日は、朝まで、ほぼトイレの中で生活しました。

牡蠣の食当たりの原因は、2つあります。 貝毒によるものと、ウイルスです。 私の場合は、貝毒で腸内ビブリオが原因でした。

初期症状が重症化するという特徴があり、嘔吐、下痢、発熱が特徴です。私の症状とピッタリです。 3日間は、まともに歩けないほどツラかったですが、4日目から急速に回復しました。

後日、牡蠣鍋チームの私を除いた3名に聞くと、みんな同じような症状に苦しみ4~5日で回復していました。もちろん、A君の信頼と仲間内の地位が、最下層に失墜したことは言うまでもありません。

それだけでは終わらない、敏感肌ゆえの苦悩

牡蠣による食当たりが回復したのは良かったのですが、ここから敏感肌だからなのか、他の人にはない特有の症状が出てきました。 それは、『湿疹』です。

ちょうど食あたり症状が和らいだ4日目。 「やれやれ、これで地獄の苦しみともおさらばだ」とソファに寝転がってテレビを見ていると、右腕が少し痒いのです。何気なしに掻いていると、どんどん痒みがひどくなります。

あまりに痒いので服の袖をめくってみると、手首から脇にかけて直径5mm程度の蚊に刺されたような湿疹が無数にあります。時間と共に、ぶわ~っと、みるみる増えていきます

その痒さたるや、すさまじいものがあります。また、この湿疹は、変わった特性を持っていて、刺激を与えると湿疹同士がくっついて大きな湿疹になります。好奇心を抑えられずに試してみると、最大で5cm程度の大きさにまで育ちました。それ以上は、気持ち悪いので止めましたが・・・。

今までいろんな肌トラブルに悩まされ、いろいろなアレルギー反応で鍛えられた鋼鉄の意思でグッと我慢。

丸一日で痒みが少しマシになり、「やれやれ、そろそろ治るかな~」と思っていると、今度は左腕が痒くなります。袖をめくると案の定、湿疹が。前日と同じ症状です。ここでもグッと我慢。

翌日、今度はお腹と腰回りが痒くなり、例のごとく無数の湿疹が・・・。

その翌日は、ふくらはぎからアキレス腱にかけてできました。出来たときよりは、痒みがマシになるとはいえ、痒いものは痒いです。また、完全には治らず、どんどん湿疹のできる場所が増えます

日常生活を送っていると、どうしても肌と衣服がこすれますし、靴を履くとアキレス腱の部分に刺激を受けてしまい、こうしたことによって、どんどん湿疹が育ちます。

育った湿疹は、痒みも増し、さらに腫れあがるので、日常生活を送るのにかなりの支障をきたすようになってきました。さすがに、4日経過して治る気配がないので、病院に駆け込みました。

診断は、原因は良く分からないけど、たぶん牡蠣とのこと。「アレルギー反応だから、これ塗っといて様子見といて」とステロイドの塗り薬を処方されました。私の記憶の中では、これが生まれて初めてステロイドを使った瞬間です。それまでも病院に行って処方されたことはあったのですが、副作用が怖かったので、使いませんでした。

でも、あまりの広範囲による痒みに耐えられず、使ってみました。すると、ステロイドの効果は絶大でした。塗ってしばらくすると、みるみるうちに、湿疹が消えていきます。あれほどツラかった痒みも消えます。時間にすると5~10分ぐらいでしょうか。

直径5cmの巨大な湿疹が、すーっと消えていくさまには、言いようのない不安を感じました。薬というのは、効果が高いほど副作用も強くなります。あれほど痒くて、無くならなかった湿疹が10分で綺麗に消え去るのです。ということは、それと同等の副作用があるということです。

あのまま放置していたら、肌を掻き壊したり、跡に残るようなことになっていたと思います。「必要な時には使う」という選択、日頃からケアをきちんとしておく、などいくつか気づかされる出来事でした。

最後に・・・

それにしても、つくづく肌が異常に敏感だと「損だな」と感じます。

普通の人は、吐き気・嘔吐・下痢だけで終わるのに、敏感肌だとその後に湿疹による痒み地獄が待っています。原因が体内にあると、ステロイドのような薬に頼らざるを得ません。そして、薬には必ず副作用があります。だからこそ、正しい知識を持って、うかつなことは避けたいものです。

そして、 敏感肌の人は、いくら生牡蠣と大きく書いてあっても、しっかりとその横に加熱用の文字がないかを確認しましょう(って当然です)

ちなみに、医師から、「もしかしたら、今回のことで牡蠣アレルギーになるかも」と言われたので、それを確認すべく、回復した翌週に再度、牡蠣を食べました。もちろん、しっかり加熱して、大量に食べました。結果は、何の問題もなく、牡蠣アレルギーも発症しませんでした!(「先週あんなことになったのに、よく食べれるなあ」と妻はあきれ顔でしたが・・・)

でも、このことを医療関係の友人に言ったら、「もし、牡蠣アレルギーだったら死んでるかもよ。普通は、ほんの少量を食べて、その後を見るんだよ!」と言われました。ふーーー、危なかったです。ほんと、正しい知識は必要です。

井上龍弥

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