化粧品に配合される界面活性剤とは

 
『界面活性剤』は、バラベンほどではないものの、乾燥肌や肌荒れしやすい人たちに嫌われている化粧品成分です。

界面活性剤が嫌われる主な理由もパラベンと似ており、1985年に決められた指定成分表示義務から始まる「特定の成分を悪者にして、自社の化粧品を良く見せよう」とする宣伝手法が横行したためです。

昔なら「無添加化粧品」、今なら「オーガニック化粧品」を作る化粧品メーカーが、「界面活性剤には害がある」と主張することが多いように思います。

でも、界面活性剤は、化粧品にとって必要不可欠な成分です。
特に、乾燥肌対策には、「欠かすことのできない必須成分」と言ってもいいでしょう。
あなたが乾燥肌なら、ぜひこの情報を知っておいてください。

    本記事の内容

  • 界面活性剤の種類や、その性質がわかる
  • 使う化粧品によって、界面活性剤が必要か必要ではないかが判断できる

 
私は今から約20年前、1997年に美容業界に入りました。
基礎化粧品や、シャンプーなどトイレタリ―商品の製造・開発研究、OEMという化粧品ブランドの企画・開発・委受託製造から、企業に向けた営業販売、美容室向け商品のセミナー講師など、美容にまつわるあらゆる仕事を経験をしてきました。

そして、2001年にはこれまでの美容に関する経験を活かして、自社ブランドの化粧品を開発して、今まで10万人を超える乾燥肌の方に使っていただきました。
現在も愛用者の方たちと協力して、乾燥肌に対する知識と経験を積み重ねています。
今回は、これまでの化粧品、スキンケアの経験をもとに、誤解の多い界面活性剤の本当の姿を説明いたします。

界面活性剤の効果

界面活性剤とは、水と油の両方の性質を持ち、水と油の仲を取り持つ働きをするものです。
化学的にいうと、『2つの性質が異なる物質の表面=界面に作用する物質』の総称です。

洗浄作用・起泡作用・乳化作用・保湿作用など、界面活性剤には化粧品をつくる際に不可欠な機能があります。

こう聞くと何だか小難しくてよくわからないので、よくないイメージを持っている乾燥肌の方も多いのですが、界面活性剤は私たち人間の体内や植物中にも存在しているもので、決して悪いものではありません。

界面活性剤のすぐれた働きその1:
シャンプーやクレンジング、洗顔料に使われる洗浄作用・起泡作用

界面活性剤は、多くの化粧品に配合されています。

わかりやすい働きでいうと、洗剤や洗顔、シャンプーなどに使われる汚れを落とす『洗浄作用』や、泡を立たせる『起泡作用』などが実感しやすくイメージしやすいですね。

ちなみに、固形石けんも、界面活性剤の一種です。

界面活性剤のすぐれた働きその2:
乳液やクリームに使われる乳化作用

食品や医薬品、化粧品でよく使われる界面活性剤には、『乳化作用』があります。
表示する際には、界面活性剤ではなく『乳化剤』と書かれています。

乳化剤の働きは、その名の通りで『乳化』することです。
簡単にいうと、水と油のように相反する特性のあるものが均一に混ざり合った状態を保つことです。

例えばドレッシングを思い浮かべてください。ドレッシングも水と油で作られています。
水と油は、一緒にいれると2層にわかれます。
だから、使う前に振りますよね。
そうすると、一時的に水と油が混ざっておいしいドレッシングになります。
これが乳化された状態です。

その後に放っておくと、水は下に、油は上に分離します。
これは、水と油がお互い反発する特性を持っていることと、比重の違いが原因です。

だからドレッシングの場合は、使うたびに振る必要が出てきます。
また、振り方や使い方によって、水と油の均一性が崩れていくことでドレッシングの味も変わってきます。

化粧品も同じです。
化粧品は、簡単にいうと水と油でできています
水に親和性の高い成分を水溶性成分、油に親和性の高い成分を油溶性成分と言います。

例えば、水と少量の水溶性成分でつくる化粧水は、もともと水と水溶性成分の親和性が高いために界面活性剤をそれほど配合しなくても作ることができます。
さらに、使用前に振ることを前提にした容器を使えば、界面活性剤無添加で作ることも可能です。
逆に、水と油溶性成分は、混ざりにくいので界面活性剤が必要です。

ただ、油溶性であっても油溶性成分の配合を減らせば減らすほど、必要な界面活性剤の配合量は減ります。
この場合、美容成分を減らすことになり、『ただの水』に近づいているということになるので、どれだけ美容効果が残るのか疑問ですが。

逆に、オイルなどの油溶性成分を配合する場合やクリームや美容液などのように粘度のある化粧品を作る場合、界面活性剤で乳化することが必須です。
もし、界面活性剤を配合しないと、水溶性成分と油溶性成分がすぐに分離してしまいます。

また、ドレッシングの場合は混ざりが悪いことで味が変わる程度で済みますが、化粧品の場合はそれだけではすみません。
水分と美容成分の混ざりが悪いと美容成分の均一性が失われることが、肌トラブルに繋がります

極論、中身が均一に乳化されていない化粧品を使い、運悪く防腐剤部分を最初に使い切ってしまったら?
その化粧品は防腐剤を使い切ることで、非常に腐りやすくなります。
腐った化粧品は、乾燥肌になり、敏感肌やシミ、シワ、ニキビなど肌荒れを引き起こします。

以上のことから、界面活性剤を配合して乳化させることが、化粧品の安全性を高めています。

界面活性剤の安全性

今度は、界面活性剤の安全性についてみていきましょう。

界面活性剤を使うと、油分と水分を混ぜ、その状態を長時間安定・維持することができます。

界面活性剤は、食品にも広く使われています。
例えば、マヨネーズ。マヨネーズも、お酢+油+界面活性剤の働きをする卵黄で作られています。
他にはバター、マーガリン、牛乳などの食品にも、界面活性剤が含まれています。

そのおかげで、使う度にわざわざ振る必要もなく、味や効果が変わることもありません。
界面活性剤のおかげで、均一に乳化されて、非常に安定性が高く、商品の効果を保持することができるのです。

化粧品において、この『安定性』という要素は、化粧品の安全性にも深くかかわっており、乾燥肌の方にとっても、界面活性剤は非常にメリットのある成分です。

また界面活性剤は、食品以外にも私たちの体内にも存在していますし、そのほかにも多くの自然物の中に含まれており、その存在自体によって体や乾燥肌が刺激が引き起こすことはありません。

でも、「界面活性剤は、肌への刺激となる」というイメージを持っている人がいます。
これは、1985年に制定された指定成分に含まれたいたことが原因です。
パラベンとまったく同じ経緯をたどっています。

関連記事>>>乾燥肌にパラベンフリー化粧品は、安全?危険?

それでも悪いイメージのある界面活性剤

界面活性剤が表示指定成分に含まれたのは、当時の化粧品成分製造技術の未熟さからくるものです。
現在は、当時と比較にならないほど技術力も上がり、肌に刺激のある不純物が混じることもありません。

そもそも指定成分は、その意味をなくして廃止されているのに、当時のイメージを利用して、安全性の高い界面活性剤を悪者にするのはどうかと思います。

界面活性剤は、洗剤にも使われています。
洗濯用や食器洗いなどに用いられるものです。
だから、洗剤と同じもののように、界面活性剤が配合された化粧品をとらえ、「洗剤を顔に塗るのは、刺激になる」と考えている人もいます。

衣服の取れにくい汚れは、皮脂や油汚れなどですから、界面活性剤を使うことで油分を浮かせ、浮かせた汚れを再付着しないようにできます。
このようなひどい汚れに対して、非常に効果的な洗浄力があるために、界面活性剤は多くの洗剤に配合されています。
だからと言って、「化粧品と洗剤が同じ」というのは浅慮です。

「落ちにくい」ものを「落とす」界面活性剤の働き

もちろん化粧品でも、落ちにくいものを落とすために界面活性剤を使います。
メイク落とし用のクレンジング剤なんかがそうです。

メイク化粧品や化粧下地は、皮脂や汗によって落ちやすいとその役割を果たせません。
だから、肌に吸着するように作られ、そのおかげで汗や皮脂で落ちにくくできています。

汗や皮脂では落ちないメイク化粧品や化粧下地は、通常のクレンジングでは落ちません。
そこで、界面活性剤を使います

そうすることで、肌に残ることなく、きれいにメイク化粧品を落とすことができます。

この時の洗浄力が、乾燥肌の人にとって刺激になる場合があります。
特に最近のメイク化粧品はかなり高性能なので、それに合わせて、メイク落としクレンジングの洗浄力も強力な傾向があります。

しかし、それは落ちにくいメイク化粧品を使うことが問題なのであって、界面活性剤の問題ではありません。
刺激が強いと感じるクレンジングは使わず、メイク化粧品の機能性を落とせば済む話です。

界面活性剤が含まれているという一点だけをとらえて、「刺激になる」と考えるのはおかしいと思います。
化粧品で使用される界面活性剤は、うまく使いこなすことで、優れた効果を活かし、安全性を発揮することができます。

その結果、乾燥肌対策に必要な効果や安全性・安定性を確保することができます。

石油系合成界面活性剤のデメリット

界面活性剤は大変優れた機能を持っていて、化粧品だけではなく、医薬品や食品など、多くの分野で活躍しています。
本当に優れた機能を持つ界面活性剤ですが、ただ一つだけ問題があります
それは、界面活性剤の種類です。

界面活性剤は、自然界に存在する界面活性剤もあれば、人の手で作られている合成の界面活活性剤もあります。
数にすると実に多くの種類があり、その用途によって異なる性質を持ったものが開発されています。

それぞれの界面活性剤にメリット・デメリットがありますが、自然界に存在するものの多くは、安全性は高いものの機能性が劣ります

一方、合成されたものの多くは、機能性が高く、自然界に存在するものよりもはるかに長時間安定させる働きがあるのです。
そのため、食品や医薬品、医薬部外品、化粧品など安定した安全性が求められるものには、合成の界面活性剤が使われます。

ところが、合成の界面活性剤の中には、私が配合したくない、と思うものがあります。
それが、『石油系の合成界面活性剤』です。

石油系界面活性剤とは?

『石油系の合成界面活性剤』とは、その名のとおり 石油から作られた界面活性剤です。
非常に機能性の高い界面活性剤なので、化粧品メーカーとしてはぜひ使いたいものです。

ところが、その高い機能性のために、肌に残留しやすい性質を持っているのです。

例えば、液体ボディソープで体を洗ったら、いつまでたってもヌルヌルとした感触が残ることはありませんか?

実は、これは界面活性剤が肌に残っているのです。
洗浄成分がいつまでも肌に残るので、これが乾燥肌にとっては肌トラブルにつながることがあります。
前述の落ちにくいメイクでも落とせる、強力なメイク落としクレンジングも、この手のタイプです。

石油系界面活性剤の特徴

残留しやすいと表現しましたが、実際には『くっつきやすい』という性質です。
くっつきやすさを生かして、メイク化粧品とくっつき、それによって汚れを落とすわけです。

このとき汚れだけにくっついてくれればいいのですが、肌にもしっかりとくっついてきます
このくっつくものが、肌に残留する成分の正体です。
私はこの肌にヌルヌルと残る感覚が苦手で、ボディソープなんかは製品テスト以外、日常的な使用を避けています。

まれに、石油系界面活性剤のヌルヌルを『潤い』と表現している製品もありますが、これは大きな誤りなので、そのような製品は使わないようにしましょう。

このことから私は、石油系の界面活性剤をできる限り使いません。
特に、保湿ケアのように、常に肌の上に塗布した状態を保つものには使いたくありません。
確かに高機能で使い勝手もいいのですが、乾燥肌へのリスクを考えてしまいます。

界面活性剤を使いこなすことが乾燥肌改善の近道

界面活性剤は、化粧品を作る際には必要不可欠な成分です。
ただ、界面活性剤そのものは、乾燥肌対策となる効果はありません。
あくまでも化粧品を構成するために必要な副次的な役割です。
だから、界面活性剤を肌に塗ったところで美容効果が得られるわけではありません。

だから、界面活性剤の配合量をできるだけ減らして、その分、美容成分を入れることが重要です。

また先ほど、「石油系界面活性剤は使わないほうがいい」と言いましたが、実は、一概にそうとは言えません
落ちにくいメイク化粧品を使う人にとっては必要なのと同じで、この機能が必要な場合もあります

例えば、日焼け止めの必須機能と言える『ウォータプルーフ効果』、この効果を得るためには石油系界面活性剤を使います
ほかの界面活性剤では効果が弱く、紫外線カット成分が汗や皮脂で流れ落ちてしまうからです。

私自身、真夏にテストしたのですが、石油系界面活性剤を配合していない日焼け止めはすぐに流れ落ちて、バッチリ日焼けしてしまいました。
わずか30分のテストでしたが、炎症を起こして赤くなり、チクチクと痛みました。

このように紫外線は、乾燥肌にとって大敵です。百害あって一利なしです。
だから、日焼け止めでガードするんですが、石油系界面活性剤を配合しないと流れ落ちて、紫外線のダメージを直接受けてしまいます。

この場合、紫外線によって受けるダメージと、石油系界面活性剤の刺激を天秤にかける必要があります。

天秤にかけた結果、「答えは、石油系界面活性剤を使うの一択」だと私は考えます。
それほど紫外線は危険だということです。

また、工夫次第で、石油系界面活性剤の使用量を減らすことができます。
石油系界面活性剤の配合量を減らせば、それに比例して刺激の可能性も減ります。
だから、私も日焼け止めを開発した時は、石油系界面活性剤を使います。
その方が、肌への刺激を軽減するからです。

このように、「石油系界面活性剤は、絶対に使用してはいけない」という訳ではないです。

石油系界面活性剤よって得られるメリットとデメリットを判断して、メリットが多ければ配合すべきです。
そして、少しでもデメリットを軽減する努力をすればいいのです。

これは、他の界面活性剤でも同じことが言えます。

泡立ちが多いことがあたかも優れた洗顔料のようによく宣伝されていますが、あれは泡立ち効果の高い界面活性剤を泡立ちをよくする目的で配合しているのです。
でも、実際は、いくら泡立ちをよくしても、汚れが落ちるわけではありません。

つまり、無添加化粧品やオーガニック化粧品と同じで、効果のないことを効果があるように宣伝する手法として界面活性剤を使っているだけです。

私はこんなことのために大量の界面活性剤を配合するなら、その分、洗浄成分を配合すればいいと思います。

だから、売りやすく見せかけるために界面活性剤を配合していたり、画一的に悪者にして、その高い効果を否定するような化粧品は、乾燥肌対策に役立たないでしょう。

むしろ、界面活性剤の特性を理解して、必要な機能を必要最低限の配合量で備える化粧品こそ、乾燥肌対策に最適な化粧品です。
そして、これこそが化粧品開発者の腕の見せ所だと言えます。

では、続いて、『乾燥肌対策に必要なたった一つの美容効果とは?』をお読みください。

更新日:2019.01.12投稿日:2013.07.31

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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